トリコノドン(読み)とりこのどん(その他表記)triconodon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリコノドン」の意味・わかりやすい解説

トリコノドン
とりこのどん
triconodon
[学] Triconodonta

化石でのみ知られている原始的な哺乳(ほにゅう)動物。最初の化石はイングランド南西部ドーセットの海岸の崖(がけ)をつくっている泥炭岩から発見された。恐竜が繁栄していた中生代ジュラ紀末期のもので、約1億4500万年前のものとされる。大きさは、現生のネコぐらいで、顎(あご)は細長く、鋸(のこぎり)の目のようにとがった突起のある歯が並び、食虫性の樹上生活者であったとされている。

 このものの一つの頬歯(きょうし)には三つの突起が並んでいて、そのことからラテン語のトリtri(「三つの」の意)、コヌスconus(円錐)、デンスdens(歯)をつないだ学名がつけられている。日本語では三突起歯類(さんとっきしるい)あるいは三錐歯類(さんすいしるい)、中国では三尖歯獣(さんせんしじゅう)と訳されている。

 原始的な哺乳動物ということで「異獣類(いじゅうるい)」というグループに含められていて、現生哺乳動物の大半を占めている「獣類」のグループとは別なグループのものとされている。また、原始的な哺乳動物で、現存するカモノハシの「原獣類」のグループとは異なるグループのものである。中生代の三畳紀の哺乳類型爬虫(はちゅう)類から、現在の哺乳動物につながる白亜紀の哺乳類に移行する過程のものである。

 現在の哺乳動物の臼歯(きゅうし)は、動物の種類によってさまざまな形をしている。しかしながら、それらの臼歯の形は、もともとは三つの咬頭(こうとう)(食物咀嚼(そしゃく)する咬合面にみられる隆起)が三角形の頂点を占める三結節歯(さんけつせっし)が基本と考えられ、その後、進化することによって、さまざまな形をした歯がつくられたとされている。その先駆となったのが、このトリコノドンの歯であるとされ、トリコノドンが哺乳類共通の祖先とされたこともあった。

 しかし、現在では、哺乳動物の進化の初期に分化して特殊化したものであるとされている。

亀井節夫

『エドウィン・H・コルバート、マイケル・モラレス、イーライ・C・ミンコフ著、田隅本生訳『脊椎動物の進化』原著第5版(2004・築地書館)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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