トリノフンダマシ(英語表記)Cyrtarachne bufo

改訂新版 世界大百科事典 「トリノフンダマシ」の意味・わかりやすい解説

トリノフンダマシ
Cyrtarachne bufo

コガネグモ科トリノフンダマシ属のクモ。昼間は葉裏に静止し,脚を縮めているためクモには見えず,腹部の黒と白の模様から鳥の糞がついているように見えるのでこの名がある。体長は雌8~10mm,雄1.5~2mm。本州,四国,九州,南西諸島,台湾に分布草原,果樹園,山間部の明るい場所に多く,ススキクワ,クリなどの葉裏を好む。夕方になると造網を始め,大型の同心水平円網を張る。網は直径30cm~1m,横糸間隔が広く目が粗い。粘着力は強くおもにガ類の成虫がかかり捕食される。網は日中は乾燥して,糸の粘着力がなくなるため,夜明けに壊して食べてしまい葉裏にもどる。トリノフンダマシ属に含まれるクモは,世界では約60種,日本ではトリノフンダマシ,オオトリノフンダマシ,アカイロトリノフンダマシ,ソメワケトリノフンダマシ,クロトリノフンダマシなど7種が知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリノフンダマシ」の意味・わかりやすい解説

トリノフンダマシ
とりのふんだまし / 擬鳥糞蜘蛛
[学] Cyrtarachne bufo

節足動物門クモ形綱真正クモ目コガネグモ科に属するクモ。体長は雌10ミリメートル、雄2ミリメートルに達し、腹部は横長で大きく丸く、静止していると頭胸部も脚(あし)もほとんど見えない。背中は黄色、腹部は前方灰色大部分白色、両肩に灰色の丸い斑紋(はんもん)がある。日中、広葉樹やススキの葉裏に脚を縮めて止まっているようすが、葉についた鳥の糞(ふん)のようにみえるのでこの名がある。日没後に網を張り、日の出前に網を壊すので、長い間、網を張ることは知られなかった。網は目が粗く縦糸も横糸も数本の糸からなる水平円網である。本州、四国、九州に分布する。種類が多く、オオトリノフンダマシ、アカイロトリノフンダマシ、シロオビトリノフンダマシなどがあり、また別属のツシマトリノフンダマシ、サカグチトリノフンダマシなどもある。

[八木沼健夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリノフンダマシ」の意味・わかりやすい解説

トリノフンダマシ
Cyrtarachne bufo

クモ綱クモ目コガネグモ科。体長は雌 1cm,雄 0.1~0.2cm。黄白色の腹部は著しく幅が広く,前側方に灰褐色の紋がある。日中広葉樹の葉裏に歩脚を縮めて静止している様子が鳥の糞を思わせるのでその名がある。やや長い球形の卵嚢を葉裏につるす。以前は網を張らないクモと考えられていたが,日が暮れてから目のあらい大きな水平円網を張り,夜明け前に網を丸めてたたむことが明らかになった。網の縦糸は7~10本ほどしかないが,横糸の粘着力が強く,虫がよく掛かる。やや大型のオオトリノフンダマシ C. inaequalisは黄色で,卵嚢は長く,先が細くなる。 (→クモ類 )

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