ドチザメ(読み)どちざめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドチザメ」の意味・わかりやすい解説

ドチザメ
どちざめ / 奴智鮫

軟骨魚綱メジロザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。ドチザメ科Triakidae(英名houndsharks)は目が楕円(だえん)形であること、第1背びれが腹びれより前にあり、第2背びれが第1背びれよりすこし小さいこと、尾びれ下葉が発達することなどが特徴で、9属からなる。そのうち、ドチザメ属Triakisには世界に5種が知られ、日本近海にはドチザメT. scyllium(英名banded houndshark)1種のみが分布する。同種は目が細長く、しわ状のまぶた(瞬皮)があること、体に幅の広い暗色の垂直の縞(しま)紋様斑点(はんてん)があること、歯がやや外方に傾いた3尖頭(せんとう)であることなどが特徴である。水深30~150メートルの浅海を好み、藻場(もば)や汽水域にまで入り、エビやゴカイ類などの小動物を捕食する。生殖方法は非胎盤型の胎生で、6、7月に交尾し、春に30センチメートルくらいの子を20尾前後産む。全長1.5メートルほどになるが、性質は穏やかで、しかも飼育しやすいので水族館でよく見られる種である。北海道南部以南の日本各地、朝鮮半島、台湾、中国の沿岸に分布する。国際自然保護連合IUCN)のレッド・リストでは、絶滅危惧(きぐ)種中の「危機」(EN)に指定されている(2021年9月時点)。

[仲谷一宏 2021年10月20日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ドチザメ」の意味・わかりやすい解説

ドチザメ
Triakis scyllia

メジロザメ目ドチザメ科の海産魚。和名は動作が鈍いことに由来するのであろう。同属のサメに対し英名はleopard sharkという。この英名は体の模様がヒョウに似ているところから生じた名称であるが,日本のドチザメには灰黒色の地肌に約10条の暗色横帯と黒点が散在し,ヒョウの模様には似ていない。本州中部以南中国に分布する。眼に光の入量を調節したりする機能があるといわれる瞬皺(しゆんしゆう)があることおよび使われている歯が前後に2列以上配列していることが特徴。全長1.5mほどになる。沿岸の海藻の繁茂する海底で生活し,夜になると浅瀬に出て小動物をあさる。群れをつくらないので,まとまっては採集されない。卵胎生のサメで初夏に交尾し,春先に全長30cmの胎児を20尾前後生む。性質はおとなしく,またあまり動きまわらないので水族館での飼育に適している。大量に漁獲されないことや肉がおいしくないので,せいぜい練製品の材料にしかならない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドチザメ」の意味・わかりやすい解説

ドチザメ
Triakis scyllium

メジロザメ目ドチザメ科の海水魚。全長 1.5mに達する。体はやや細長く,頭部は縦扁し,尾部は側扁する。口は下位で,口角の唇褶は発達している。眼はやや細く,瞬膜がある。体は灰色で,ぶち状斑や暗色の横縞がある。胎生。日本の水族館で最もよく見られるサメで,性質はおとなしい。沿岸性。北海道南部以南,日本海大陸沿岸から台湾まで分布する。肉は練製品の原料となる。

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