ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドリーニュ」の意味・わかりやすい解説
ドリーニュ
Deligne, Pierre René
ベルギーの数学者。1966年,ブリュッセル自由大学を卒業,1968年同大学で博士号を取得。1968年にフランス高等科学研究所 IHÉSへ赴任。1984年からアメリカ合衆国のプリンストン高等研究所 IAS教授を務める。1978年,フィンランドのヘルシンキで開催された国際数学者会議で代数幾何学における業績によりフィールズ賞を受賞した。フランスの数学者アンドレ・ベイユは 1949年に,有限体上の代数多様体に対するゼータ関数(→リーマンのゼータ関数)について,いくつかの予想を提唱した。これらは,古典的なゼータ関数に対するリーマンの仮説に対応する性質である。ドリーニュは数学者アレクサンドル・グロタンディークが約 15年前に発展させたエタール・コホモロジーと呼ばれる新しいコホモロジー理論を援用することにより,ベイユ予想を解決することに成功した。ドリーニュの業績は,代数幾何学と整数論との関係について重要な洞察を与えるものである。また,ドリーニュは代数多様体のホッジ構造の理論について顕著な貢献をし,さらに確定特異点(→特異点)をもつ微分方程式の理論においても業績を上げた。2013年,アーベル賞を受賞。
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