日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナタン」の意味・わかりやすい解説
ナタン
なたん
Nātān ヘブライ語
Nathan 英語
『旧約聖書』(「列王記」上・1章、「サムエル記」7、12章)に登場する人物。ダビデの宮廷に仕えた預言者で、ソロモンの教師。ナタンは、ダビデが神のために家(神殿)を建てようと考えたとき、神はそれを望まず、むしろダビデのために家(王国)を建て、長く栄えさせるであろうという預言を伝えた。これはナタン預言とよばれ、ダビデ王朝の正当性の根拠となり、後のイザヤやエレミヤの預言に対しても影響が及ぶ。ダビデの後継者選出にあたって、年長のアドニヤが王位継承権を主張したのに対し、ソロモン擁立を画策した。ここには、軍の長や祭司を巻き込む古代王朝の王位継承の権力闘争があった。
[市川 裕]