ナダール(読み)なだーる(英語表記)Nadar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナダール」の意味・わかりやすい解説

ナダール
なだーる
Nadar
(1820―1910)

フランスの写真家。ダゲレオタイプ(銀板写真)が生まれて以来の最初の巨匠。本名Gaspard-Félix Tournachon。パリ出版業者の子として生まれ、青年時代から「パンテオンナダール」と号して、風刺画を描くジャーナリストとして活躍する。1853年、パリの下町で写真スタジオを始め、従来の肖像写真にはなかった生き生きとした性格描写で人気を博した。60年には繁華街に進出し、ナダール・スタジオにはボードレール、大デュマユゴージョルジュ・サンドドラクロワアングルモネサラ・ベルナールといった同時代の芸術家や名士たちが押し寄せてにぎわった。彼はまた、熱気球による空中写真、人工照明(アーク灯)による写真などの祖である。第1回の印象主義の展覧会(1874)の会場となったのは、彼のスタジオであった。

[平木 収]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナダール」の意味・わかりやすい解説

ナダール
Nadar

[生]1820.4.5. パリ
[没]1910.3. パリ
フランスの写真家,諷刺画家,ジャーナリスト。本名 Gaspard-Felix Tournachon。 1853年パリに写真スタジオを開設し,「パンテオン・ナダール」のタイトルで当時の有名人の肖像写真を発表。同スタジオは 74年にのちに印象派展と呼ばれる展覧会場となったことでも有名。軽気球を愛好し 58年に世界初の航空写真を撮影,63年自家用の軽気球『ジェアン』号を建造,のちに軽気球に関する数点の著作を出版。漫画家としては T.ゴーティエ,T.バンビル,E.ゴンクールら著名な文学者の顔立ちを巧妙に描写した作品で知られる。

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