コロー(読み)ころー(その他表記)Jean-Baptiste Camille Corot

デジタル大辞泉 「コロー」の意味・読み・例文・類語

コロー(Jean-Baptiste Camille Corot)

[1796~1875]フランス画家。詩情あふれる風景画人物画を描き、色調・筆致ともに温雅。→バルビゾン派

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精選版 日本国語大辞典 「コロー」の意味・読み・例文・類語

コロー

  1. ( Jean-Baptiste Camille Corot ジャン=バティスト=カミーユ━ ) フランスの画家。バルビゾン派の一人で風景画家として知られ、印象派先駆者とされる。作風はロマン的な詩情と古典的な典雅さとをたたえている。作品に「モルトフォンテーヌの回想」「真珠の女」など。(一七九六‐一八七五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コロー」の意味・わかりやすい解説

コロー
ころー
Jean-Baptiste Camille Corot
(1796―1875)

フランスの画家。7月17日パリに生まれる。商人の道を歩ませようという両親の意に反して絵画を志し、最初若い風景画家アシル・ミシャロンAchille-Etna Michallon(1796―1822)に学び、ついで新古典主義者ビクトール・ベルタンJean-Victor Bertin(1767―1842)に学ぶ。ベルタンを通じてプサンなどにも学ぶが、ベルタンは同時に、自然を研究することを教える。1825~1828年の間ローマに遊学。当時ローマに集まっていた外国人画家たちの、アカデミズムを脱却して戸外の自然の真実を求めようとする態度に同調し、ローマやカンパニアの野を題材として、明るい地中海の光、明確な形態感の描出を求めた数多くの習作を残している。

 帰国後も自然の真実を求めて、フランスの各地を旅行し、スイス、イギリスにも旅行し、イタリアにも1834、1843年の2回旅している。とくに、パリに近いビル・ダブレーに1年のうちある期間滞在して、『シャルトル大聖堂』(1830年。ルーブル美術館)などの周辺の風景を描く。バルビゾンでも描いているが、オランダ派の影響の強い他の画家たちに対して、コローはイタリア派の明晰(めいせき)さを守っている。また、一般にバルビゾン派が自然から受け止める観念的な情緒を表出しようとしたのに対して、彼はより視覚的な真実を求める。しかし、イル・ド・フランス地方などの柔らかな光や大気、緑の諧調(かいちょう)などが、イタリア的な視覚の明るさとは異なる微妙な雰囲気の描出をしだいにコローに啓発する。「コローの銀灰色」とよばれる微妙な輝きを帯びた緑の諧調などがそれである。

 彼は1827年よりサロンに定期的に出品している。しかし、ここでは伝統的な審査に対する配慮のために歴史画、聖書画などが主体であり、少なくとも1835年までは成功していない。しかし、風景のなかにニンフたちを描く作品はしだいに注目を集め、1855年のパリ万国博覧会の際の展示で一挙に名声は高まる。『モルトフォンテーヌの思い出』(1864年。ルーブル美術館)、『マントの橋』(1868~1870年。ルーブル美術館)は、自然の柔らかな光の震えを再現するとともに、静かな詩想をさえ宿す円熟期の作品である。

 一方、コローは人物表現も行い、とりわけ裸婦や女性肖像に、『青衣の婦人』(1874年。ルーブル美術館)、『真珠の首飾りの夫人』(1868~1870年ころ。ルーブル美術館)などの傑作を残し、2月22日パリに没した。ロボーAlfred Robaut(1830―1909)編集の全作品目録には約2500点の作品が集録されているが、さらにそれに数百点の追加が予想される。

中山公男

『佐々木英也解説『現代世界美術全集19 コロー/ミレー/クールベ』(1973・集英社)』『マドレーヌ・ウール著、田中淳一訳『コロー』(1992・美術出版社)』『坂本満解説『新潮美術文庫21 コロー』』


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改訂新版 世界大百科事典 「コロー」の意味・わかりやすい解説

コロー
Jean-Baptiste Camille Corot
生没年:1796-1875

フランスの画家。19世紀フランスで,風景画家としておそらく人々から最も愛された。それには抒情にあふれた作風だけでなく,〈コローおじ〉と慕われる温好な人柄も一役かっていた。ラシャ卸業者の父と,婦人帽子店を経営する母との間にパリで生まれる。母から豊かな感受性と洗練された美意識を受け継ぎ,早くから絵を好んだ。19歳で父の勧めによりラシャ卸業者の見習いとなるが,商売には身が入らず,夜は画塾に通い,週末は父がパリ近郊ビル・ダブレーに購入した別荘で自然にひたるなど,画業に熱中した。26歳のとき,商売と手を切って画家の道を歩むことを父に許される。ミシャロンAchille-Etna Michallon,そしてその師のベルタンJean-Victor Bertinの下で新古典主義の風景画を学び,伝統教育の仕上げとして29歳から32歳までイタリアに学ぶ。イタリアよりサロン(官展)に出品,風景画家としてデビュー。これ以後,冬場を除いてイタリアなど外国をも含め,旅多き生活を送る。画壇ではさして芽も出なかったが,ゴーティエ,ネルバルなどロマン主義文学運動の闘士たちは,古典主義的ながらも,情感豊かな彼の作品を高く評価した。バルビゾン派の風景画家たちとも制作場所を同じくするときがあったが,一世代年長のコローは助言者的立場にとどまり,自身は光と大気をやわらかな銀灰色を主調に描く独自の風景画を模索し続けた。50歳になってもボードレールなど一部批評家が好意的であったにとどまり,名声とは縁遠かった。このころより彼の風景画は抒情味が増し,回想的になった。1855年のパリ万国博覧会に6点を出品し,35点のドラクロア,40点のアングルをしり目に最高賞に輝いた。60歳にして画壇の寵児となったが,旅に明け暮れ,冬はアトリエで人物画を,絵を描くという純粋な楽しみのために制作した。しかし,アトリエを訪れるピサロなど若手画家には可能なかぎり助言を与え,また窮乏するドーミエを経済的に救ったりもした。その画業が後の印象派に与えた影響は大きい。
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百科事典マイペディア 「コロー」の意味・わかりやすい解説

コロー

19世紀フランスの代表的風景画家。パリ生れ。バルビゾン派の一人。フォンテンブローやビルダブレーの森で描いた親しみやすい風景画は,柔らかで透明な光と,独特の銀灰色を主調とする調和的な彩色,古典的で安定した構図を特徴とする。人物画にも傑作が多い。代表作に《ローマ,ファルネーゼ庭園から眺めたコロッセウムの眺め》(1826年,ルーブル美術館蔵),《モルトフォンテンの思い出》(1864年,同美術館蔵),《真珠の女》(1868年―1870年,同美術館蔵)などがある。
→関連項目ピサロ風景画ミレーレビタン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コロー」の意味・わかりやすい解説

コロー
Corot, Jean-Baptiste Camille

[生]1796.7.16. パリ
[没]1875.2.22. パリ
フランスの画家。 26歳から絵を学び,新古典主義の画家ミシャロンや V.ベルタンの弟子となって外光派の絵画を制作。 1825~28年ローマに滞在,『ナルニの橋』 (1826,ルーブル美術館) ,『コロセウム遠望』 (26,同) などを描き,自己の様式を確立。帰国後バルビゾン派に加わり,またヨーロッパ各地を旅行しながら制作。 50年頃から『朝,ニンフの踊り』 (50頃,オルセー美術館) ,『モルトフォンテーヌの回想』 (64,ルーブル美術館) など銀灰色を基調としたやわらかい色彩の詩的な作品を描くようになり,また『真珠の女』 (68~70,同) などの人物画の秀作も制作。晩年には新鮮な色彩の風景画によって印象主義の先駆的役割を果した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「コロー」の解説

コロー
Jean Baptiste Camille Corot

1796~1875

フランス人,バルビゾン派の代表的画家。古典派から出て独自の画風を創り,銀灰色を基調とする典雅で詩情にあふれた風景画を多く描いた。肖像や静物画もある。作品に「イタリア風景」「真珠の女」など。

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旺文社世界史事典 三訂版 「コロー」の解説

コロー
Jean Baptiste Camille Corot

1796〜1875
フランスの画家
典雅で写実的な風景画が名高い。ミレー・ドーミエ・ボードレールらの友人をもち,彼らを援助した。代表作「真珠の女」。

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世界大百科事典(旧版)内のコローの言及

【偽作】より

…これらが後者の例に属する。しかしほかにも,たとえばコローが友人や弟子たちの困窮を助けるため,彼らの作品に署名をしてやった例がある(19世紀から20世紀初頭,コローはきわめて高価で流通性も高かったため,これらコローが署名だけした作品をふくめて各種の偽作が生まれた。アメリカ所在のコロー作と称する作品だけでも彼の真正作品の全量を上回っている)。…

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