ナリヒラダケ(その他表記)Semiarundinaria fastuosa (Mitf.) Makino

改訂新版 世界大百科事典 「ナリヒラダケ」の意味・わかりやすい解説

ナリヒラダケ (業平竹)
Semiarundinaria fastuosa (Mitf.) Makino

イネ科の中型のタケ類。節ごとに出る枝の数はふつう3本。トウチクに似ているが,タケの皮に耳がなく,肩毛がほとんどないので区別される。稈(かん)の色は冬季,紅紫色となる。枝ぶりが美しく,タケの皮が稈から離れるのを惜しむかのようにぶら下がる。とりわけ枝を抱きかかえるような姿はいじらしく,庭に植えて愛用される。近畿では,この姿をたたえてダイミョウチク大名竹)とよばれる。関東以南に広く観賞用に栽培され,中国,台湾にもある。アオナリヒラ(青業平)f.viridis (Makino) Murataは稈の色が冬でも緑色。リクチュウダケ(陸中竹)S.kagamiana Makinoは寒さにいちばん強く,北海道釧路近辺でも生育できる。

 トウチク(唐竹)Sinobambusa tootsik Makinoはナリヒラダケに似るが,太さのわりに節間長が長いことと,出たてのタケの皮に耳とかたい肩毛のあることで区別され,別種とされる。暖地で栽培され,中国,台湾にもみられる。

 スズコナリヒラ(鈴小業平)cv.Suzukonarihiraはナリヒラの名はついているが,トウチクの園芸品である。葉に白黄色の縦線があり,美観を呈し,観賞用とする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナリヒラダケ」の意味・わかりやすい解説

ナリヒラダケ
なりひらだけ / 業平竹
[学] Semiarundinaria fastuosa (Mitf.) Makino

イネ科(APG分類:イネ科)のタケ・ササ類。本属は中形のタケで、一節から数本の枝を出す。竹の皮は乾くと開き、基部の中央が節から離れず、しばらくの間内面を外に向けて垂れ下がる。日本に5種分布する。そのうちの一種ナリヒラダケは竹の皮の基部に細毛があり、稈面(かんめん)は初め緑色、年を経て紫褐色に変わる。葉は広披針(ひしん)形で、毛はない。本州南西部に分布し、各地で栽培される。名は、稈はオダケ(男竹。マダケ類)に似て、枝の出方と葉はメダケ(女竹)に似ることから、その美しさを美男代名詞でもある在原業平(ありわらのなりひら)になぞらえたという。

[鈴木貞雄 2019年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナリヒラダケ」の意味・わかりやすい解説

ナリヒラダケ(業平竹)
ナリヒラダケ
Semiarundinaria fastuosa

イネ科の大型のタケの1種。中国地方,九州四国に自生するが,普通は観賞用として庭に植えられる。高さ 5mあまりになり,径 3.5cmぐらい。根茎は横に走り,ところどころにたけのこが出る。たけのこの皮は紫緑色で毛はなく,稈節に付着したまま開き脱落する。稈は紅緑色。枝が短く群生するので美しい。枝先はジグザグに伸びる。葉は小枝ごとに4~5枚つく。名前の由来は竹 (男竹) であるが笹 (女竹) のように1節から多くの枝を出すことから,在原業平に見立てたとも,姿がやさしいところからついたともいわれる。

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