改訂新版 世界大百科事典 「ニューカスル病」の意味・わかりやすい解説
ニューカスル病 (ニューカスルびょう)
Newcastle disease
ニワトリ,シチメンチョウなどのウイルス性疾病。イギリスのニューカスル地方で1926年に致死率の高いニワトリ,キジ,シチメンチョウに対する伝染病の発生があった。原因はウイルスで,呼吸器症状と神経症状を現す。日本でも54年に広範な流行があり,65-67年には病原性の強い型が全国的に大流行した。
伝播(でんぱ)は接触,飛沫感染などによる。潜伏期は短く2~3日,おそくとも5~6日で発病する。ウイルスがニワトリ体内へ侵入すると呼吸器や眼結膜は著しい変化を呈し,その部位で増殖し,初感染部位より血流を介して全身にウイルスが運ばれ増殖する。病鶏の涙,鼻汁,糞尿(ふんによう)などに多量に含まれ,感染源となる。重症なものは急性で胃腸炎型と呼ばれ,4~8日でそのほとんどが死亡する。沈うつ,鼻づまりのため開口呼吸,緑色下痢などの症状を示す。体温が上昇し,目を閉じてうずくまり死亡する。呼吸器粘膜に充・出血,壊死(えし)などの変化を呈し,周囲結合組織に水腫が認められる。このほか胃および腸粘膜に出血,潰瘍を生じ,皮下,内臓漿膜(しようまく)面,心冠部そのほか脂肪組織に点状出血が示される。中等症のものは慢性で肺脳炎型と呼ばれ,緑色便を排しながら,呼吸器症状を示し,その後翼や脚の麻痺が起こる。若い1ヵ月齢以内のものの死亡率は高いが,約2週間で回復に向かう。この時期は,頭頸部の捻転,ぐるぐるまわるような運動を現す。軽症型のものは軽い沈うつ,異常呼吸,下痢などの症状を示すが,死亡することは少ない。
本病の発症によって受ける損害は大きく,養鶏業に大打撃を与えることから,日本では法定伝染病に指定されている。対象となる鳥類はニワトリ,アヒル,シチメンチョウ,ウズラである。病気のまんえんを防止することを目的として家畜伝染病予防法で規制されているが,この病気が疑われると,必要があれば殺処分の対象となる伝染病でもある。
診断にはウイルスの検出,ウイルス抗原の検出,血清中のウイルスに特異的に反応する抗体の検出などを試み,他のニワトリの伝染病との鑑別を行う。養鶏家は絶滅を目標として,厳重な衛生管理とワクチン接種を心掛けなくてはならない。現在日本では不活化ワクチンと生ワクチンの2種類がある。治療法はなく,野鳥や人(結膜炎)もかかるので,飼育者も取扱いに十分注意しなくてはならない。
執筆者:本好 茂一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報