日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニワシドリ」の意味・わかりやすい解説
ニワシドリ
にわしどり / 庭師鳥
bowerbird
鳥綱スズメ目ニワシドリ科に属する鳥の総称。コヤツクリともいう。また、アズマヤドリとよばれたこともあり、オーストラリア産の1種にその名が残っている。この科Ptilonorhynchidaeの仲間は、オーストラリア東部とニューギニア島に約18種がある。全長20~40センチメートル、中形で普通の体形をした鳥で、羽色はじみなものが多いが、一部の雄は飾り羽かはでな羽色をもっている。大半の種は森林性であるが疎林にすむものもあり、果実や芽や種子を主食とし、昆虫やカタツムリなどの小動物も食べる。樹上に小枝で椀(わん)状の巣をつくり、1~3卵を産む。ネコドリ属Ailuroedusの3種を除き、研究された種ではすべて、造巣、抱卵、育雛(いくすう)を雌だけが行う。また、ネコドリ類を除くこの科の鳥は、雄が手のこんだ小屋や庭をつくることで有名である。雄は繁殖期に先だって、林内の地表から径1~3メートルにわたって落ち葉や枯れ枝をきれいに取り除いて土を露出させ、そこに種ごとに異なる建造物をつくる。それには四つのタイプがあるが、有名なのはそのうち複雑な二つで、一つは枯れ枝を10~20センチメートルの厚さに敷き詰め、その上に枯れ枝を2列に並べて立て通路をつくるもので、もう一つは高さ1~2メートルの若木を中心にしてその周りに枯れ枝を積んで塔や小屋のようなものをつくるものである。後者ではその周りに蘚(せん)類を敷き詰め美しい小果実や花を飾って庭のようにする。前者では骨、カタツムリの殻、小石、羽毛などを飾る。雄は繁殖期中この付近にいて庭の手入れをし、雌が訪れるとそこでさえずり踊る。交尾が済むと雌はそこを去って1羽で営巣に入る。したがってこの類の雌雄関係は乱婚的であろうとされている。
[浦本昌紀]