日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌバ」の意味・わかりやすい解説
ヌバ
ぬば
Nuba
アフリカ、スーダン中央部ヌバ丘陵に住むコルドファン語系の人々の総称。人口は約60万。少なくとも50の方言集団に分かれ、互いのコミュニケーションは困難である。方言は約10の語群にまとめることができるが、そのなかには西アフリカや上ナイル地方の言語と親縁性を示すものもある。身体的特徴として、高身長、漆黒の皮膚、中頭、縮毛(しゅくもう)などがあげられるが、西アフリカの諸集団からナイロート系諸集団に典型的な体つきまで多様である。生業はおもに農耕で、ミレット、ソルガム、トウモロコシが主要作物である。タバコ、綿花なども換金作物として栽培されている。段々畑、多少の灌漑(かんがい)や動物の糞(ふん)の肥料などの利用がみられる。平地では牛牧も行うが、雨期には牛を村に連れてくる。またブタを飼っているが、ブタは初期エジプトでは広く飼われていたものの、その後不浄なものとして放棄され、さらにイスラム教の影響のためこの地方ではまれな動物である。ヌバの社会組織はかなり多様で、北部の集団は父系であるが、南部は母系である。一部には二重出自もみられる。ヌバは歴史上アラブの侵略を受け、その結果イスラム教の影響が残されているが、伝統的宗教も失っていない。とくに南部の孤立している集団は全宇宙を動かす力に対する信仰を保持し、儀礼的競技を通じてこの力を引き出したり制御したりすることができるとされる。とりわけ神聖な灰を体に塗って行う格闘技はよく知られている。
[加藤 泰]
『レニ・リーフェンシュタール写真、石岡瑛子構成、P・ビアード、虫明亜呂無文『Nuba(ヌバ)』(1980・パルコ出版)』