改訂新版 世界大百科事典 「ヌメリグサ」の意味・わかりやすい解説
ヌメリグサ
Sacciolepis indica (L.) Chase ssp.ovyzetorum (Makino) T.Koyama
水田の縁や河川の岸などの低地の日当りのよい湿地に生えるイネ科の一年草。茎はひげ根のある根もとから立ち,下部で枝分れして叢生(そうせい)し,高さは30~50cm,細く,やや軟らかく,平滑,毛はない。葉は少数個茎につき,線形で軟らかく,長さ10~20cm,幅は2~6mmで,濃い緑色,多少紫色を帯びることがある。夏から秋にかけて茎の頂に1個の穂状花序を直立する。花序は円柱形で,長さ6~12cm,幅は5~7mm,多少紫色を帯びた暗緑色で,多数の小穂を密生する。小穂にはきわめて短い柄があるが見えにくく,穂体は幅広の卵形で,長さ3mm前後,ときに長い毛があり,芒(のぎ)はない。
温帯から亜熱帯に生じ,日本の本州以南琉球と中国大陸南部に分布する。和名は〈滑(ぬめ)り草〉の意で,この草の葉を手でもむと粘質になるからであるという。基本変種のハイヌメリは,全体にやや小型で茎の基部がはい,日本から中国,インド,東南アジア,インドネシア,オーストラリア地方に広く分布する。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報