改訂新版 世界大百科事典 「ノミバッタ」の意味・わかりやすい解説
ノミバッタ (蚤蝗)
直翅目ノミバッタ科の1種,またはノミバッタ科に属する昆虫の総称。ノミバッタ科Tridactylidaeはバッタ類やヒシバッタ類に近縁なグループで,小型で特異的な体つきをしている。日本にはノミバッタ1種が産するだけである。
ノミバッタXya japonicaは,ほぼ全体黒色で,黄銅色の光沢をもつ体長5~6mmの微小種。日本全国にふつうで,台湾や中国にも分布する。頭部は体に比べて大きく,触角は糸状で短い。頭部の後半はビヤ樽状の前胸背板に隠れるが,前胸背板の後縁はヒシバッタのように後方に強くのびることがなく,強い丸みを帯びている。前翅は細く腹部中央に達する程度。後翅はこれより少し長めで,広げると扇状となる。後肢腿節は非常に太く,また平たく,腹部をおおうように位置し,しばしば黄色の模様をもつ。後肢脛節(けいせつ)は淡褐色で細長く,その先端に1対のへら状物がついているが,これは脛節のとげが異常に長くなったものである。後肢跗節(ふせつ)は1節。腹部は細長く,腹端には背面の1対の尾角と腹面の1対の尾突起の計4本の突起がある。なお,産卵管は退化している。成虫は夏季に現れ,日当りのよい,少し湿った地面や砂地に多く見られる。ノミバッタの名は,小さくてよくはねることによる。ときには農作物に加害することがある。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報