ケラ(読み)けら(英語表記)African mole cricket

精選版 日本国語大辞典 「ケラ」の意味・読み・例文・類語

ケラ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] cella ) 古代ギリシアローマの神殿、さらにオリエントやエーゲの神殿で、神像や神体を安置する内陣、奥室のこと。セラ

けら

  1. 〘 名詞 〙 植物「いいぎり(飯桐)」の古名

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケラ」の意味・わかりやすい解説

ケラ(昆虫)
けら / 螻蛄
African mole cricket
[学] Gryllotalpa africana

昆虫綱直翅(ちょくし)目ケラ科に属する昆虫。ケラ類を総称していう場合もある。農作物害虫で、俗にオケラともいう。

[山崎柄根]

形態

体長3センチメートル内外、全体茶褐色で、前脚脛節(けいせつ)は赤褐色。頭部卵形で小さく、触角は糸状で短い。頭部は丸みを帯び前方に強く細まり、樽(たる)形をした前胸背板に半分ほど隠される。前胸背板には金色微小突起を密生している。前翅は短く楕円(だえん)形で、腹部の根元部分を覆うのみ。前翅は雌雄ともに相似た翅脈をもつが、雄では肘脈(ちゅうみゃく)が枝分れして長三角室をつくり、雌ではこれを欠く。また前翅は雌雄ともに発音器を備えている。後翅は前翅より長く、先端は腹端を越える。前脚はモグラの手のように鋭いつめを備え幅広く、土を掘るのに適した開掘脚(かいくつきゃく)になっている。中脚と後ろ脚は両方とも短く、相似ているが、後ろ脚の腿節(たいせつ)は腹部に沿って湾曲する。腹部は円筒状で長く、尾角は普通のコオロギ類のように長い。産卵管は退化していて、腹端部は雌雄よく似ている。

[山崎柄根]

生態

成虫、幼虫とも地表に近い地下にトンネルをつくり、その中で生活する。産卵は5、6月に行われ、幼虫態でほぼ1年過ごし、翌年の秋までには成虫となる。成熟した雌はトンネルをとっくり状に広げ、そこに草などを詰めて4、5粒の卵を産み付ける。成虫は春秋にトンネル内で低い調子のジージーという声で鳴く。越冬直前になると、それまでの湿った場所を捨て、乾いた土地へ移動する。このとき、灯火に飛んできたりするが、やがて地表深くへ潜って越冬する。食性は雑食性で、植物の根などを食べる。野菜畑や苗代などでは重要な害虫となる。アカオビトガリバチなどLarra属のハチは、特異的にケラを狩る、ケラの天敵である。

 日本全土に分布し、アジア、アフリカ、オーストラリアなどに広く分布する。コオロギ類にもっとも類縁が近いが、その生活上の特異性とともに独特の位置を保っている。

[山崎柄根]

民俗

つかまえたケラが足を広げるのを見て、「おまえのお椀(わん)どのくらい」などと大きさを問いかけ、足の開き方で大小を判断する遊びが広く行われている。沖縄県八重山(やえやま)列島石垣島などでは、ケラをニーラ・コンチェンマ(地底の世界の姉さんの意)とよぶ。砂浜で、両手で顔を覆った子が砂の上に伏せ、ほかの子が砂をかけて埋め、ケラになぞらえて、地下の世界のようすを尋ねて答えさせるという子供の遊びも、ニーラ・コンチェンマといい、一種の神意を問う儀式の遊戯化のようである。ケラに問いかけて大小を判断する遊びも、本来はまじめな占いの作法であったと思われる。

[小島瓔



ケラ(鳥)
けら / 啄木鳥

鳥綱キツツキキツツキ科に属する鳥(キツツキ類)の別称で、アカゲラ、コゲラなどのように個々の種名に用いられる。この名は、繁殖期に枯れ枝などを激しくたたいて出す音からきたものといわれる。

[浦本昌紀]

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改訂新版 世界大百科事典 「ケラ」の意味・わかりやすい解説

ケラ (螻蛄)
mole cricket
Gryllotalpa africana

直翅目コオロギ上科ケラ科の昆虫。俗にオケラともいう。地表近い地中にトンネルを掘り,その中で生活する。前脚が土を掘るためにシャベル状に特化し,モグラの前脚を思わせる。雄は小さな前翅を振動させてジージーと低い音で鳴く。日本全国,アジア,アフリカ,オーストラリアなどに広く分布する。全体が茶褐色で,体長約30mm。頭は小さく,筒状で大きい前胸背板にすっぽりとはまっている。触角は短く,この点で他のコオロギ類と異なっている。前胸背板には金色の細毛が密生している。前翅は短く楕円形,後翅はより大きく,その先端は腹端をこえ,燕尾状になっている。前脚は鋭いつめを備えた開掘肢(かいくつし)であるが,中脚はふつうの歩行肢,そして後脚は短いながら跳躍肢となっている。腹部は円筒状。産卵管は退化している。おおむねトンネル生活をするが,夜間地上に出ることもあり,複眼も単眼も備えている。雑食性で,植物の根やミミズなどを食べ,農作物の根も食べるので害虫とされる。5,6月に土中に卵をかためて産む。かえった幼虫は秋までに成虫となり,越冬直前になると越冬地を求めて飛び出す。このとき灯火に飛んでくることもある。アカオビトガリアナバチ(体長17mm前後,土中に営巣)などLarra属のハチが天敵で,このハチは特異的にケラだけを狩り,幼虫の餌とする。
執筆者:



ケラ (啄木鳥)

アリスイ類を除いたキツツキ科の鳥の総称。日本産のキツツキ類の和名は,アカゲラ(赤啄木鳥)とかアオゲラ(青啄木鳥)とかのように,その種の特徴を表した語の後に,語尾としてケラがつけられている。また,キツツキ類に形態や習性の似ている鳥の和名にも用いられ,例えばケラインコは尾羽の羽軸がキツツキのようにかたいことから名付けられている。
執筆者:


ケラ
cella[ラテン]

ギリシア・ローマ神殿において,周囲の列柱廊部分から壁によって区別された,神殿の本体を指す用語。しばしば,内陣,すなわち神像を安置する神殿の主室であるギリシア語のナオスnaosと同義に使われる。しかし厳密には,ナオスのほかに,プロナオスpronaos(玄関間,前室)およびオピストドモスopisthodomos(裏玄関間,後室)をも含む。ケラを囲う壁に窓はなく,光は出入口からのみ採られる。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケラ」の意味・わかりやすい解説

ケラ
Gryllotalpa orientalis; mole cricket

直翅目ケラ科。体長 30mm内外。全体が褐色の円筒形状で,頭部は小さい。触角はむち状で短く,複眼は小さい。前肢はモグラのそれに似た特異な形になっていて土を掘るのに適しており,脛節内側には鼓膜がある。前翅は短く,雌雄とも発音器がある。後翅は長いが細くたたまれる。腹端に2本の尾毛がある。土中にトンネルを掘ってすみ,幼虫,成虫ともに一年中みられる。成虫は「じーっ」と鳴き,俗にミミズが鳴くといわれる。日本全土,アジア東部に広く分布する。 (→直翅類 )

ケラ
cella

古代ローマ神殿の神像が安置される場所で,正方形または矩形で入口以外は壁に囲まれている。大神殿のケラは外部に開放されているが,小さいものは屋内に置かれる場合もある。ギリシア神殿のナオス (内陣) に相当する。

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百科事典マイペディア 「ケラ」の意味・わかりやすい解説

ケラ

直翅(ちょくし)目ケラ科の昆虫の1種。体長30mm内外,茶色。前脚の脛(けい)節が太く,内側が鋸歯(きょし)状になり土を掘るのに適した形に変わっている。日本,朝鮮,中国〜熱帯アジア,オーストラリア,アフリカに広く分布。幼虫または成虫で越冬。ほとんど一年中成虫が見られる。湿った土中にすみ,雑食性。ジーと単調な声で鳴き,〈ミミズが鳴く〉と誤解される。灯火にくる。

けら(【けら】)【けら】

和鋼(わこう)

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「ケラ」の解説

ケラ
学名:Gryllotalpa africana

種名 / ケラ
解説 / 土の中にあなをほってすみます。幼虫または成虫で越冬します。
目名科名 / バッタ目|ケラ科
体の大きさ / 30~35mm
分布 / 北海道~南西諸島
成虫出現期 / 4~9月
幼虫の食べ物 / 雑食性
鳴き声 / ビー

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世界大百科事典(旧版)内のケラの言及

【アンミ】より

…夏季に散形状に多数の花をつけ,果実は長楕円形。この果実をエジプトでケラkhella,あるいはケラ実という。フロクロモン誘導体ケーリンkhellin(有効成分),ビスナギンvisnagin,ビスアンミノールvisamminol,ケロールグルコシドkhellolglucoside,クマリン誘導体サミジンsamidin,ジヒドロサミジンdihydrosamidinなどを含む。…

【蓑】より

…表側は材料が重なりあっているが,裏側は網のように編んである。東北地方ではケラと呼び,雨,雪の日に必要なものであった。またダテゲラという蓑は,海菅(うみすげ)という海草を黒く染めて作るが,とくに首のまわりには各種の色糸を用い,鶴亀,矢羽根,松竹梅などの模様を編みこみ,背部には麻,シナノキの皮を長く垂らして装飾とした。…

【たたら(鑪∥踏鞴)】より

…操業を終えると炉全体をこわし,還元された鉄の塊を取り出す。これを〈けら(鉧)〉という。このけらをこぶし程度の大きさに砕き,その破面の様子などによって玉鋼(たまはがね)をスラグやずく(銑鉄)などと選別する。…

【ミミズ(蚯蚓)】より

…ミミズが土壌を肥沃にし,縦横に穴を掘って移動するので通気性を高め,農作業上有益であることは古くから知られていた。また近代まで,土中にあって鳴くケラ(螻蛄)の雄の音をミミズが鳴くといい,声を美しくする妙薬として,泥を吐かせたミミズを,酒をもって生きたままのむこともあった。薬用としたのはカブラミミズという,頸部(けいぶ)に白環のあるものである。…

※「ケラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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