日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒシバッタ」の意味・わかりやすい解説
ヒシバッタ
ひしばった / 菱蝗
grouse locust
[学] Acridium japonicum
昆虫綱直翅(ちょくし)目ヒシバッタ科に属する昆虫。地表面で生活する土色の、バッタに似た小形の虫。前胸背板が後方に強く伸長して、背面からみると全体が菱(ひし)形にみえるので、この名がある。バッタを押しつづめたような形をしている。前翅は鱗片(りんぺん)状に退化するが、後翅は腹端に届く長さで、扇子のような形をしており、前胸背板下の腹部側方にぴたりと折り畳まれていて目だたない。はねで飛ぶことはなく、むしろ力強く発達した後肢の跳躍を用いて、よく跳びはねる。前胸背板には紋をもつものもあるが、中間型が出たり、消失したりする。日本全土、朝鮮半島、中国、シベリアなどに分布する。なお、この種はしばしば農作物を加害することがある。
ヒシバッタ科Tetrigidaeの昆虫はいずれも小形で前胸背板に特徴がある。前・中肢の跗節(ふせつ)は2節、後肢のそれは3節で、爪間盤(そうかんばん)や鼓膜を欠く点でバッタ類と異なる。湿った地表面に好んですむ。日本にはヒシバッタのほか、本州以南にすむトゲヒシバッタCriotettix bispinosus、奄美(あまみ)大島以南にすむヒラタヒシバッタPotua platynotaなど数種が分布する。
[山崎柄根]