改訂新版 世界大百科事典 「ハエカビ」の意味・わかりやすい解説
ハエカビ (蠅黴)
Entomophthora
接合菌類のハエカビ目に含まれる1属の菌類。この属の菌はすべて昆虫の内部寄生菌である。もっとも著名な種類はE.muscae (Cohn) Fres.で,かつてEmpusa muscae (Fr.) Cohnと呼ばれたものである。窓ガラス,柱,葉の裏面などにハエがとまって死んでいることがあるが,これはこの菌に寄生されたものである。雨期に多いようであるが,ハエの死体は白い粉状を呈し,その周辺は白い暈(かさ)状の粉のようなものに取り巻かれている。この周辺の白い粉のようなものは胞子の集団である。菌糸はハエの体節の気門などから外に出て,体表面に棍棒状の胞子柄を一面に生じ,その先にできた胞子(分生子)がハエの体を中心に急激に射出したものである。新しいハエの体に付着した胞子は,その粘質膜で体に粘着し,発芽して体内に入り,これを殺して再び表面に胞子を生じ,射出することを繰り返す。菌糸の固まった中の配偶子囊が接合して接合胞子をつくる。
執筆者:椿 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報