改訂新版 世界大百科事典 「ハゲコウ」の意味・わかりやすい解説
ハゲコウ (禿鸛)
marabou
adjutant stork
コウノトリ目コウノトリ科ハゲコウ属Leptoptilosの鳥の総称。この属には,南アジアに分布するオオハゲコウL.dubiusとコハゲコウL.javanicusおよびアフリカに分布するアフリカハゲコウL.crumeniferusの3種がある。オオハゲコウとアフリカハゲコウは,どちらも全長1.5m,翼幅3mに及ぶ大きな鳥である。コハゲコウは全長約1.1m,他の2種よりやや小さい。ハゲコウの名が示すように,頭頸(とうけい)部は皮膚が裸出していることが特徴。まっすぐなくちばしは大きくて長く,脚も非常に長い。オオハゲコウとアフリカハゲコウは,のどの下に奇妙なのど袋がぶら下がっている。こののど袋の機能はよくわかっていない。羽色は,3種とも背面が暗灰色ないし青黒色で,腹は白い。裸出した頭頸部とのど袋は肉色,くちばしと脚は角(つの)色(灰黒褐色)ないし黒色。
ハゲコウ類は動物の死体や腐肉を主食とし,生きたネズミ,カエル,ヘビ,小鳥などもとらえて食べる。頭頸部が裸出しているのは,腐肉で羽毛が汚れないための適応と考えられる。かれらは死体を食べてくれるので,死体の掃除人として役だっている。カルカッタ(現,コルカタ)などのインドの諸都市では,かつてたくさんのオオハゲコウが街の中にすみ,動物の死体などの清掃に役だっていたが,ごみ処理の発達した今日では,これは昔話になっている。ハゲコウ類は一般に開けた場所にすみ,ハゲワシのように滑空しながら獲物を探す。他のコウノトリ科の鳥のように,鳴管は退化していて,鳴声の代りに,上下のくちばしをたたき合わせて,カタカタと聞こえる音を出す。繁殖は集団をつくって行い,高い木や岩棚の上に小枝を集めて営巣する。1腹の卵は2~4個,抱卵期間は約30日(アフリカハゲコウ)。雌雄とも抱卵,育雛(いくすう)をする。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報