改訂新版 世界大百科事典 「ハタタテダイ」の意味・わかりやすい解説
ハタタテダイ (旗立鯛)
Heniochus acuminatus
スズキ目チョウチョウウオ科の海産魚。背びれの第4棘(きよく)が糸状にのび,その白い鰭膜(きまく)がひらひらと美しく,旗指物を立てているように見えるのでこの名がある。ハタタテダイは江の島付近の呼名だが,イトヒキ(三崎),キョウゲンバカマ(和歌山),サンバソウ(浜田),ノボリダイ(田辺),ハタタテ,ホタテ(長崎)などの呼名が各地にある。体はひし形に近く,白い体側に2条の幅広い黒色縦帯が鮮やかで,背びれ,尾びれ,胸びれなどの黄色と映えて水族館の人気者。暖海性でたいへん分布が広い。本州中部以南から高知,琉球に分布するが,世界的には紅海からアフリカ東岸,インド洋,オーストラリア,ポリネシア,フィリピン,ハワイに見られる。浅海性のサンゴ礁魚類で水深30mくらいまで,単独で,あるいは小さな群れをつくって泳いでいる。産卵期は夏。全長20cmほどになる。美味でなく食用魚としては価値は低い。沖縄では練製品の原料にされることもある。近似種にミナミハタタテ,オニハタタテなどがある。
執筆者:清水 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報