六訂版 家庭医学大全科 「ハチ刺傷」の解説
ハチ刺傷
ハチししょう
Bee sting
(外傷)
どんな外傷か
ハチ毒による直接作用と、繰り返して刺されたことによるアレルギー作用から、局所・全身の症状を示します。死亡する場合の多くは、後者のアナフィラキシーショック(急性の全身性ショック)が原因といわれています。
アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチ、マルハナバチ類の約20種類が毒針をもつ攻撃的なハチとされています。
ハチ毒には、局所の痛みや
症状の現れ方
刺された直後に激痛が走り、局所は発赤、腫脹します。大型のスズメバチや多数のハチに一度に刺されるとハチ毒による中毒として、頭痛、発熱、嘔吐・下痢などの消化器症状や、呼吸困難、さらにはけいれんなどの全身症状が現れ、多臓器不全から死亡することもあります。
アナフィラキシーショックは、刺されてから15~20分以降に起こります。前回刺された時に、局所の症状が激しかった場合、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性が高いとされているので、注意が必要です。
治療の方法
局所の疼痛、
山林業などに従事する人々を対象に、アナフィラキシーショックによる死亡を回避するため、刺された現場で注射できる自己注射用アドレナリンが日本でも2003年から発売されています。
応急処置はどうするか
ミツバチは毒腺を残して飛び去るので、ナイフなどでていねいにはぎ取ります。ただし、不用意に指やピンセットでつまむと、さらに毒液を注入することになるので注意が必要です。
以前に刺されたことがある人は、あらかじめ医療機関から注射器にセットされたアドレナリン製剤を入手し、準備しておくとよいでしょう。
吉岡 敏治
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報