日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒアルロニダーゼ」の意味・わかりやすい解説
ヒアルロニダーゼ
ひあるろにだーぜ
hyaluronidase
ヒアルロン酸を低分子化する酵素の総称で、(1)N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の間のβ(ベータ)-1・4結合を加水分解するエンドヘキソサミニダーゼ型の酵素と、(2)グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの間のβ-1・3結合を加水分解するエンドグルクロニダーゼ型の酵素のほか、加水分解ではなく脱離的に分解する(3)エンドヘキソサミン開裂型の酵素と、(4)エンドグルコサミン開裂型の酵素がある。(1)の酵素は高等動物の精巣や精子のほか、肝臓のリソゾームや皮膚、ヘビ毒などに存在し、(2)の酵素はヒル、(3)と(4)は細菌に存在する。また、(1)の酵素や細菌の酵素はコンドロイチン硫酸にも作用する。なお、(3)と(4)の場合はグルクロン酸に二重結合ができるのでリアーゼにも属する。また、古くから拡散因子あるいはムチナーゼとよばれていたものも、ヒアルロニダーゼと同一物またはそれを含むものである。
ヒアルロニダーゼは、ムコ多糖の構造研究あるいは同定や定量の試薬として用いられ、また細菌の侵入や精子の卵への侵入の際、ヒアルロン酸を分解してその粘度を下げ、侵入を容易にする因子の一つと考えられている。
[村松 喬]