ハッジャージュブンユースフ(英語表記)Hajjāj b.Yūsuf

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ハッジャージュ・ブン・ユースフ
Hajjāj b.Yūsuf
生没年:661-714

ウマイヤ朝軍人,政治家。イブン・アッズバイルの第2次内乱中,ウマイヤ朝第5代カリフアブド・アルマリクに登用されて内乱を終結させ,メディナ総督を経てイラク総督に任命された。ハワーリジュ派一派であるアズラク派討伐してイラクの平和を回復し,灌漑干拓に努めて農業の振興を図った。クーファのアラブ戦士の不満を代表するイブン・アルアシュアスの乱(700-704)に悩まされたが,新軍営都市ワーシトを建設して武断政治を行い,中央アジア,西北インドを征服させた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ハッジャージュ・ブン・ユースフ
はっじゃーじゅぶんゆーすふ
ajjāj b. Yūsuf
(661―714)

イスラムのウマイヤ朝、イラク総督の1人。ターイフ(サウジアラビア西部)に生まれる。第二次内乱で、反ウマイヤ朝僭称(せんしょう)カリフ、イブン・アッズバイル討伐の功績で、カリフのアブドゥル・マリクによりイラク総督に任命され、ハワーリジュ派の討伐、イブン・アルアシュアスの乱の鎮圧に成功するや、中央アジア、西北インドに軍を派遣し、拡大戦争に努めた。また新都市ワーシトの建設、農地開墾に努力し、ウマイヤ朝国家の再建に貢献した。

花田宇秋]

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世界大百科事典(旧版)内のハッジャージュブンユースフの言及

【ウマイヤ朝】より

…その反面,政府とアラブ・ムカーティラとの利害の対立が増大し,イブン・アルアシュアスの乱(700)が起こった。イラク総督ハッジャージュ・ブン・ユースフは,イラクのムカーティラ統御のため軍営都市ワーシトを建設し,ここにシリアのアラブ・ムカーティラを常駐させた。このようにして,しだいにアラブ・ムスリム間の階層分化が進み,ディーワーンから除外され,土着化して農民に転落する者も増加した。…

【勧農】より

…また現実にも,イスラム国家の財政的基礎は,農民から徴収される租税にあったから,歴代の政府は,水利機構の管理・維持につとめるなどイマーラに積極的な関心を示した。 初期イスラム時代のカリフたちは有力者に荒蕪地(マワート)を授与し,これに3年間の免税特権を与えて耕地化を奨励したが,ウマイヤ朝(661‐750)時代のイラク総督ハッジャージュ・ブン・ユースフはとりわけ熱心なイマーラの推進者として知られる。彼は都市に流入したペルシア人の新改宗者マワーリーを強制的に帰村させて国庫収入の低下を食い止めるとともに,水路を開削し農民を入植させることによって下イラクの広大な湿地帯の開拓に成功した。…

【治水】より

…メソポタミアに中央集権的な国家を建設したバビロン第1王朝のハンムラピ王は,ユーフラテス川とティグリス川を結ぶ大運河を幾本も開削し,それらを無数の小運河で結ぶことによって,毎年5月に起こる洪水を統御するとともに,両河の水を灌漑水として有効に利用する体系をつくりあげた。この治水組織はアケメネス朝やササン朝でもほぼそのままの形で保持されたが,イスラム時代に入ると,ウマイヤ朝(661‐750)のイラク総督ハッジャージュ・ブン・ユースフは,大排水路を設置して南イラクの大湿地帯(バターイフ)を干潟化することに成功した。またバグダードに都を置いたアッバース朝(750‐1258)は,バビロニア時代以来の運河網を改修・整備するとともに,ササン朝時代に開削されたティグリス川の上・下流点を結ぶナフラワーンNahrawān運河を復活,これによってイラク中・南部は帝国随一の穀倉地帯に変貌した。…

【ムハンマド・ブン・アルカーシム】より

…ウマイヤ朝時代の将軍で,北西インド(シンド)の征服者。710年,イラク総督ハッジャージュ・ブン・ユースフの命により,マクラーン地方からインダス河口地域に遠征し,ダイブールを攻略した。同市を基地としてインダス川を北上し,713年,パンジャーブ地方の聖地ムルターンを攻略したが,ハッジャージュ・ブン・ユースフの死によってその任を解かれ,イラクに護送されて獄死した。…

※「ハッジャージュブンユースフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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