ハナゴケ(読み)はなごけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナゴケ」の意味・わかりやすい解説

ハナゴケ
はなごけ
[学] Cladonia rangiferina (L.) Web.

地衣類ハナゴケ科の一種。低地から高山にまでみられ、地上、岩上などに大きな群落をつくる。地衣体は小さな鱗(うろこ)状で目だたず、子柄(しへい)が大きくなるころには消失する。子柄は高さ3~10センチメートル。中心になる太い軸には多数の枝が出るが、枝の先は細く、同じ方向に傾く。子柄の表面は滑らかで、灰白色。子器は子柄の枝の頂端にまれにつく。北極圏ではトナカイ飼料に利用される。また、日本ではショーウィンドーの飾りなどに用いられている。北半球に広く分布し、日本では北海道から九州にかけて普通にみられる。

 ハナゴケ科ハナゴケ属のなかの石蕊(せきずい)群とよばれる群を総称してハナゴケreindeer lichenということもある。いずれも子柄がよく発達し、分枝が多く、子器は枝の先につき、小さい。地衣体は、子柄を残して早くに消失する。この群の分類は、分枝の仕方や化学成分の相違によって行われる。日本で知られているのは7種ほどであるが、北極圏には多く、地表一面がこのハナゴケで覆われることもある。いずれもトナカイの飼料として重要である。以下、石蕊群に含まれるおもな種を示す。

(1)ワラハナゴケC. arbuscula (Wallr.) Rabh. var. beringiana Ahti ハナゴケによく似ているが、子柄が黄色を帯びる。低地から高山にかけて生育し、日本では北海道から四国にやや普通にみられる。また、北アメリカ、シベリアにも分布する。

(2)ミヤマハナゴケC. stellaris (Opiz) Pouzar et Vézda 高山帯に多く生育する。子柄の分枝が著しく、かつ、枝がほぼ同じ長さで放射状に分枝するため、全体としては丸みをもった形となる。子柄全体(とくに先端部)は黄色を帯びる。日本では北海道から本州中部にかけてみられる。また、アジア北東部、北アメリカにも分布する。

(3)ホソハナゴケC. tenuiformis Ahti ハナゴケによく似た種類であるが、子柄が暗緑灰色で、枝の長さはやや不同。日本では本州北部にみられる。また、ロシア連邦(ウスリー川周辺)、朝鮮半島、台湾にも分布する。

[井上 浩]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナゴケ」の意味・わかりやすい解説

ハナゴケ(花苔)
ハナゴケ
Cladonia rangiferina; reindeer moss

ハナゴケ科の代表的な地衣類。クラドニアともいう。体は平らないわゆるコケ状にならず,3~10cmの軸を生じその一側にかたよって多数の分枝を出し地上に立上がる。ひとつひとつは樹状であるが,全体としては枝が互いにからみ合って絨毯状になる。軸状の茎は子器柄で,各枝の先端に子器を生じる。中空でときに破れて孔が開く。軸の色は日陰では白ないし汚灰色,日当りがよければ帯黒色となる。子器は半球形で,暗褐色ないし黒褐色。各子嚢には8個の長卵形または楕円形の胞子を生じる。近似種には子器が黄褐色のワラハナゴケ C. sylvatica,日当りがよくても黒色を帯びないハナゴケモドキ C. mitisがある。なお,高山性のものにミヤマハナゴケ C. alpestrisがある。本種,近似種ともに世界各地に広く分布する。英名トナカイゴケの名があるようにトナカイの飼料となる。

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