日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハートウェル」の意味・わかりやすい解説
ハートウェル
はーとうぇる
Leland H. Hartwell
(1939― )
アメリカの生化学者。ロサンゼルス生まれ。カリフォルニア工科大学でH・M・テミン(1975年ノーベル医学生理学賞受賞)のもとで研究、1961年に卒業。マサチューセッツ工科大学に進学し遺伝子制御機構の研究を行い、1964年に博士号取得。細胞増殖機構の研究に方向をかえ、ソーク研究所のR・ダルベッコー(1975年ノーベル医学生理学賞受賞)のもとでポリオウイルスによる細胞感染機構について研究。1965年よりカリフォルニア大学アーバイン校の準教授。ここで、細胞増殖機構を遺伝的に解析するための真核細胞モデルとして出芽酵母をみいだした。1968年にワシントン大学に移り、数多くの細胞サイクルの変異体を作製した。これらの変異体の解析により100をこえる細胞サイクルの制御にかかわる「CDC遺伝子群」を同定し、このなかのCDC28は細胞サイクルのG1期進行の最初のステップを制御する遺伝子であり、スタート遺伝子ともよばれている。また、放射線照射によりDNAが被害を受けると、DNAが修復されるまで細胞サイクルが停止する現象をみいだし、これをチェックポイント仮説として提唱した。これらの業績により、P・ナース、T・ハントとともに2001年のノーベル医学生理学賞を受賞。1997年より2010年までフレッド・ハッチンソンがん研究センター所長を務めた。
[馬場錬成 2019年2月18日]