日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナース」の意味・わかりやすい解説
ナース
なーす
Paul M. Nurse
(1949― )
イギリスの分子生物学者。ロンドン郊外のウェンブリー生まれ。1970年バーミンガム大学を卒業。1973年イースト・アングリア大学にて博士号を取得。L・ハートウェルの出芽酵母を用いた研究に触発され、スイスのベルン大学で分裂酵母の遺伝学の手法を半年間教わり、エジンバラ大学にて細胞分裂の研究を始める。細胞分裂異常を示す変異体を多数作製し、cdc2遺伝子が細胞分裂期とDNA合成期に必須(ひっす)であることを発見した。サセックス大学に移り分裂酵母を用いた分子細胞生物学を確立した後、1984年よりイギリス・帝国癌(がん)研究基金研究所に移り、CDC2タンパクがリン酸化酵素でありチロシン残基のリン酸化により制御されていることを明らかにした。またヒトのcdc2遺伝子を同定し、細胞分裂機構が動物種をこえて共通であることを示した。1987~1993年オックスフォード大学教授の職につき、CDC2タンパクとサイクリンの相互作用について研究を進めた。1993年より帝国癌研究基金研究所に戻り、T・ハントとともに精力的に研究活動を続ける。これらの業績により、ハートウェル、ハントとともに2001年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]