バターフィールド(読み)ばたーふぃーるど(その他表記)Sir Herbert Butterfield

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バターフィールド」の意味・わかりやすい解説

バターフィールド
ばたーふぃーるど
Sir Herbert Butterfield
(1900―1979)

イギリス歴史学者。ヨークシャーの生まれ。ケンブリッジ大学に学び、1944年母校の近代史教授となり、同校ピーターハウス学寮長も務めた。49年の著書『近代科学の誕生』The Origins of Modern Scienceで、近代を画する時代区分点として、伝統的なルネサンス宗教改革よりも、17世紀のガリレイからニュートンに至る時期の近代科学の成立をあて、これを産業革命に倣って「科学革命」とよんだ。近代科学の成立がヨーロッパだけでなく世界に当てはまる普遍的時代区分として、より妥当なものと考えたためである。この区分はかならずしも今日採用されているとはいいがたいが、17世紀科学革命のほうは、時代を象徴するものとして科学史家に採用されている。『近代科学の誕生』は一般史家がわかりやすく書いた科学史概説書として好評である。ほかに『ウイッグ史観批判』The Whig Interpretation of History(1931)では歴史の後知恵(あとぢえ)的解釈を戒めている。

[中山 茂]

『渡辺正雄訳『近代科学の誕生』(1978・講談社)』『越智武臣他訳『ウィッグ史観批判――現代歴史学の反省』(1967・未来社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「バターフィールド」の意味・わかりやすい解説

バターフィールド
William Butterfield
生没年:1814-1900

イギリスのゴシック・リバイバルの建築家。ロンドン生れ。1830年代末の教会改革運動に加わり,《教会聖具》(1847)の図版作製や,100以上の教会堂設計を通じて,建築家の立場からこの運動に貢献。伝統的な素材である煉瓦を活用した意匠で知られ,代表作はオール・センツ教会(ロンドン,1859),セント・オーガスティン教会(ロンドン,1877),オックスフォード大学のキブル・カレッジ(1886)など。
執筆者:


バターフィールド
Herbert Butterfield
生没年:1901-71

イギリスの歴史家。ケンブリッジ大学卒業。1930-44年同大学ピーターハウス学寮歴史学講師,44年教授,51-68年同学寮長,その間63年からは近代史欽定講座を担当。また59-61年は副学長。歴史研究のみならず,史学史,史学理論にも透徹した思索を示す。《ナポレオンの平和政策》(1929),《ホイッグ的歴史解釈》(1931),《近代科学の起源》《キリスト教と歴史》(ともに1949),そのほか著書多数。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バターフィールド」の意味・わかりやすい解説

バターフィールド
Butterfield, Herbert

[生]1900.10.7. ヨークシャー
[没]1979.7.20.
イギリスの歴史家。ケンブリッジ大学で学び,イギリス近・現代史を専攻。 1930年ケンブリッジ大学歴史学講師,44~63年同大学現代史教授。この間,歴史雑誌の編集長,歴史学協会会長,公文書諮問評議会員をつとめた。 63~68年歴史調査研究所委員。` The Origins of modern Science 1300~1800 (1949) は 17世紀の近代科学をキリスト教以来の事件としてとらえ大きな反響を呼んだ。主著『ナポレオンの平和政策』 The Peace Tactics of Napoleon1808~09' (29) ,『20世紀の国際紛争』 International Conflicts in the Twentieth Century (60) 。

バターフィールド
Butterfield, William

[生]1814.9.7. ロンドン
[没]1900.2.23. ロンドン
イギリスの建築家,装飾デザイナー。ロンドンで建築の修業を積み,ヨーロッパを旅行。中世建築について学び,1840年代から本格的な活動に入る。 100近く聖堂を建築。また多くの聖堂の修復にあたり,独特な煉瓦の使用,厳格な様式に特徴があった。主作品には,オール・セインツ聖堂 (1850~59) ,セント・マチアス聖堂 (50頃~53) ,オックスフォードのキーブル・カレッジ (66~86) などがある。また『教会聖具』 Instrumenta Ecclesiastica (47) の図版を担当した。ゴシック・リバイバルのなかで,特異な位置を占める。

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百科事典マイペディア 「バターフィールド」の意味・わかりやすい解説

バターフィールド

英国の歴史家。ケンブリッジ大学を卒業,終生ケンブリッジを離れず,1951年−1968年には母校のピーターハウスの学寮長,1963年からは近代史欽定講座を担当。狭義の歴史研究にとどまらず,史学理論,史学史,科学史などにも幅広い関心を示した著作が多い。主なものに《ホイッグの歴史解釈》(1931年),《近代科学の起源》(1949年),《キリスト教と歴史》(1949年),《イギリス人とその歴史》(1944年),また《ジョージ3世と歴史家たち》(1957年)はネイミアに論争を挑んだものとして注目された。

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世界大百科事典(旧版)内のバターフィールドの言及

【科学革命】より

…狭義には,イギリスのケンブリッジ大学の歴史学教授であったH.バターフィールドが《近代科学の起源》(1949)で用いた内容をさす。従来,世界史の上で中世と近代を画する区切りとしてルネサンスや宗教改革という事象が用いられていた。…

【科学史】より

…もっともこの時期には,客観的な記述を目指した通史,たとえばメーソンS.F.Mason《科学の歴史》(1953)などの試みもあり,あるいは,従来の啓蒙史観に由来する中世蔑視に対する反省から中世に照明を当てたクロンビーA.C.Crombie《アウグスティヌスからガリレオヘ》(1953,59。邦題《中世から近代への科学史》)やH.バターフィールド《近代科学の起源》(1949)などの著作が現れた。さらには,こうした学説の史的展開のみを扱う〈内部史internal history〉に対して,主としてマルクス主義の立場から,科学を社会的,経済的な文脈から眺めようとする〈外部史external history〉の主張として,ヘッセンB.Hessenの論文《ニュートンの“プリンキピア”の社会・経済的基礎》(1931)やJ.D.バナールの《科学の社会的機能》(1939)なども世に問われている。…

※「バターフィールド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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