パウリヌス(その他表記)Paulinus

改訂新版 世界大百科事典 「パウリヌス」の意味・わかりやすい解説

パウリヌス(ノラの)
Paulinus
生没年:353ころ-431

キリスト教司教詩人聖人ガリアの元老院貴族層の出身。同階層の年長の詩人アウソニウスの指導と親交を得,イタリアのカンパニア州総督となる(381)。384年ガリアに帰還,スペイン出身の富裕な婦人テラシアと結婚したが,家族の悲劇などから389年キリスト教の洗礼を受けてスペインに行き,さらに395年テラシアとともにカンパニアのノラNolaに移り,その地の殉教者聖フェリクスの祠を守る修道士となり,テラシアの死後,409年ノラの司教に叙任された。彼は古代末期のキリスト教ラテン詩人として聖フェリクスの誕生日ごとに作った歌をはじめ,多くの詩を作り,アウソニウスに絶交を告げた詩にはキリスト教信仰が明白に告白され,またアウグスティヌスヒエロニムスなど当時のキリスト教界の代表的人物との間に数多くの往復書簡を交わしている。
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パウリヌス(ペラの)
Paulinus
生没年:376-460ころ

ガリアのブルディガラ(現,ボルドー)の貴族。アウソニウスの孫。富裕のうちに教養を身につけた少青年期のあと,ガリアに侵入したバンダル西ゴート,アラン諸部族のなかにあって苦労し,財産を失い,ギリシア(マケドニアのペラPella)に逃れた。459年,83歳の高齢で616行の六脚韻での自叙伝を《日記》として著した。そこには当時のローマ帝国崩壊の状況が生き生きと記されているが,なおキリスト教への信仰を保持している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パウリヌス」の意味・わかりやすい解説

パウリヌス
Paulinus

[生]?
[没]644. ロチェスター
イギリス,アングロ・サクソン時代の聖職者。聖人。 601年ローマ教皇グレゴリウス1世により,アウグスチヌスを助けてイングランドを改宗させるため派遣され,ノーサンブリア王エドウィンを改宗させ,627年初代ヨーク司教となる。 632年エドウィンがマーシア王ペンダと戦って敗死後,ケントにおもむき,ロチェスター司教となる。

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世界大百科事典(旧版)内のパウリヌスの言及

【キリスト教文学】より

…ヘロデ大王の幼児虐殺を詠じた《殉教者の花,暁の閾(しきみ)に剪(き)り取られた,まだ咲きかけのバラのつぼみよ》,あるいは《死者を葬るための歌》,12人の殉教者を詠じた《栄冠について》などはことにすぐれている。フランスのボルドーに生まれた,ノラのパウリヌスも彼につづくすぐれたキリスト教詩人であるが,さらに優しい心情で聖フェリクス誕生の祝歌や,キリスト者の婚礼歌などをつくっている。 これにつづく5~6世紀は,帝国西部がゲルマン民族に攻略され,不安と騒乱に陥った時代で文学もまったく衰えたが,信仰の情熱は対比的にはげしくなり,アウグスティヌスの弟子である護教家オロシウスや,《神の統治について》などの著者サルウィアヌス,最もキリスト的な詩人といわれるセドゥリウスSedulius(470年ころ活動),散文では《哲学の慰め》で知られるボエティウスや,《教会史》を著作目録に含むカッシオドルスがあり,布教活動の面では,5世紀の教皇レオ1世ののち,ベネディクト会をはじめたベネディクトゥスと教皇グレゴリウス1世が特筆に値する。…

【ラテン文学】より

…キリスト教未公認時代最大のキリスト教ラテン作家はテルトゥリアヌスであったが,後世に与えた影響はキプリアヌスの方が大きかった。313年のキリスト教公認を境に,4世紀から5世紀にかけて,《マタイによる福音書》を叙事詩にしたユウェンクスJuvencus,雄弁家ラクタンティウス,賛美歌作者で人文主義に反対した神秘主義者アンブロシウス,古代最大のキリスト教ラテン詩人プルデンティウスとその後継者ノラのパウリヌスなどが活躍したが,古代最大の2人のキリスト教作家も続いて現れた。一人は,全古典作家に精通した人文主義者である一方,聖書をラテン語に翻訳して,異教の伝統とキリスト教とを照応させたヒエロニムス,もう一人はヨーロッパ最初の自叙伝《告白》と,《神の国》などの著作で名高いアウグスティヌスである。…

※「パウリヌス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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