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(神田憲行 ライター / 2008年)
「パン・フォーカス」のページをご覧ください。
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…ハリウッドの名プロデューサー,サミュエル・ゴールドウィンのもとで仕事をした《この三人》(1936)から,《我等の生涯の最良の年》(1946)に至る10年がワイラーのキャリアの最良の10年といわれているが,〈ワイラー・ルック〉と呼ばれることになるそのスタイルが,もっとも顕著に現れた作品である。とくにヒロインのベティ・デービスが,夫のハーバート・マーシャルを冷然と見殺しにするシーンは,〈人物を縦の構図に入れこんだ〉(アンドレ・バザン),焦点深度の深いいわゆる〈パン・フォーカス〉撮影の一つの頂点として映画史に残る名場面となった。この作品の前に,すでにオーソン・ウェルズ監督の《市民ケーン》(1941)において画期的な〈パン・フォーカス〉撮影を試みた名カメラマン,グレッグ・トーランド(ワイラーとは《白蛾》(1934)から《我等の生涯の最良の年》に至る名コンビである)が撮影を担当した。…
… ふつうのストーリー・テリングに見られる時間的配列を解体して進行し(例えば冒頭でケーンの生涯が紹介されてしまう等々),また,広角レンズを多用し,クレーンを駆使した大胆で奔放な演出が異彩を放った。ニューヨークの近代美術館で映画を見て撮影技法を研究し,とくにジョン・フォードの《駅馬車》(1939)を40回も見たとはいえ,実際に映画を撮った経験のないウェルズを助けたのは,アカデミー撮影賞を受賞した《嵐が丘》(1939)をはじめ《怒りの葡萄》《果てなき旅路》(ともに1940)でいわゆる〈パンフォーカス〉(英語ではディープフォーカスdeep focus)技法を実験していた名カメラマン,グレッグ・トーランドである。トーランドは4人の撮影スタッフを伴って撮影を担当し,〈パンフォーカス〉技法を完成させるとともにウェルズの〈ワンシーン・ワンカット〉演出を可能にした。…
※「パンフォーカス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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