スナップショット(読み)すなっぷしょっと(英語表記)snapshot

翻訳|snapshot

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スナップショット」の意味・わかりやすい解説

スナップショット
すなっぷしょっと
snapshot

1880年代の終わりにハンドカメラとロールフィルムが考案され、持ち運びや操作の簡便さから、写真撮影がアマチュアに流行し、いわゆるスナップショット時代が始まった。しかし語源的には、1860年代、イギリスのジョン・ハーシェル卿(きょう)がハンターの瞬発的な射撃動作を見て、近い将来そのような撮影方法による写真の出現を予見して、この語を案出した。盗み撮りのことである。スナップショットは、動きのある事物にすばやく接近し、しかも自由なアングルからの撮影が可能なことから、写真史初期からハンドカメラの出現が期待されていた。しかし写真芸術家にとって、スナップ画像はフィルムサイズの小さいことから引伸しに耐えず、表現的にも軽いとしてあまり使われなかった。ところが、1920年代なかばから、映画用の35ミリフィルムを応用したライカコンタックスといった本格的な35ミリカメラが誕生し、ドイツのエーリッヒ・ザロモンは1928年からそれを山高帽に忍ばせて、法廷や国際連盟会議場に出没して盗み撮りし、その気どりのない映像はキャンディッド・フォトcandid photography(公平率直な写真)とよばれた。また、フランスのアンリ・カルチエ・ブレッソンは、33年、ニューヨークにおいて、スナップショットによる個展を開き、52年これらは処女写真集『決定的瞬間』に収録されたが、これによっていわゆる「決定的瞬間」の美学が生まれ、またその美学への信仰すら生まれるようになった。その後、35ミリカメラの機能が進歩し、また明るいレンズや感材発達がますますスナップショットを普及させ、写真家たちも芸術的表現のために積極的に使うようになって今日に至っている。とりわけ、報道写真家にとってスナップショットは最良の手法といってよく、印刷術改良から、鮮明な印刷も可能となり、新聞写真でも大部分スナップショットを用いている。

[重森弘淹]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例