ヒエガエリ(その他表記)Polypogon fugax Nee ex Steud.

改訂新版 世界大百科事典 「ヒエガエリ」の意味・わかりやすい解説

ヒエガエリ
Polypogon fugax Nee ex Steud.

野原日当りのよい湿った所に見られるイネ科の一・二年草。茎はひげ根があって,多少,叢生(そうせい)し,短く横にはった下部から節で折れ曲がりながら立ち上がり,高さは20~40cm。葉は線形で,長さ5~15cm,幅4~8cm,やや軟らかく,白っぽい緑色である。5~6月ころ,茎の先に円錐花序を出す。花序は円柱形で,下方が断続するほか,密に小穂をつけ,長さ5~8cm,幅1~3cmで,紫色を帯びた淡緑色。小穂は長さ約2mm,苞穎(ほうえい)には短い毛がはえ,長さ2mmほどの細い芒(のぎ)がある。小花は1個。本州以南,琉球から南朝鮮,中国,さらに南アジア,アフリカにかけて分布し,また沿海州の南部にも知られている。和名は〈稗還り(ひえがえり)〉の意味で,その花序の形からヒエから変わったものという表現である。海岸にはえる近縁種にハマヒエガエリP.mouspeliensis Desf.がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒエガエリ」の意味・わかりやすい解説

ヒエガエリ
ひえがえり / 稗還
ditch polypogon
[学] Polypogon fugax Steud.

イネ科の一年草。稈(かん)は株立ちし、高さ20~50センチメートル。4~7月、稈頂に小穂を密生し、小穂柄の先端が棍棒(こんぼう)状に太くなる円錐(えんすい)花序をつける。小穂は楕円(だえん)形で長さ2~2.5ミリメートル、多少毛があり、1個の小花がある。包穎(ほうえい)は小花の2倍の長さで、主脈は芒(のぎ)に終わる。護穎は卵形で、先端は直立する芒になり、5本の脈がある。湿った日当りのよい庭先や平地に生え、本州から沖縄、および朝鮮半島、中国に分布する。名は全体が小さいが、ヒエによく似ているので、ヒエが変わってできたものという意味。近縁種ハマヒエガエリは芒が包穎の2~4倍も長く、円錐花序が密生、収縮して円柱状となる。海近くの湿地に生え、本州から沖縄、およびユーラシア大陸に広く分布する。

[許 建 昌]


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