改訂新版 世界大百科事典 「ヒノキバヤドリギ」の意味・わかりやすい解説
ヒノキバヤドリギ
Korthalsella japonica (Thunb.) Engl.
ヤドリギ科の葉が退化した寄生植物。ツバキやモチノキ科などの,多くは常緑広葉樹に寄生し,葉は鱗片状に退化しているが,代りに茎が扁平となり葉緑体を有して光合成を行う,いわゆる半寄生植物である。茎は高さ10~20cmほど,関節からよく分枝し,ヒノキの緑枝を想像させる。高温期につく花は細小で黄緑色,茎頂あるいは節に1~数花がつき,雌雄異花。雄花は3枚の短小な花被片を有し,3本のおしべがある。雌花の子房は下位で,果実は楕円形,長さ2~3mmほど,橙黄色に熟す。本州中部以南から中国大陸南部さらにヒマラヤやオーストラリアまで広く分布する。とくには役にたたないが,仏教の真言宗ではツバキの枝に寄生したものを〈手水(ちようず)の木〉として尊重する。弘法大師が,ヒノキで手を清め,その枝を〈心願成就のときは,投げたツバキに生きつけ〉といったことによるという。このヒノキがツバキについたものが,ヒノキバヤドリギと説明されている。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報