日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒバロ」の意味・わかりやすい解説
ヒバロ
ひばろ
Jivaro
南アメリカのペルーとエクアドルにまたがって住んでいる先住民集団。自称はシュアラShuara。言語はヒバロ語族に属する。ヒバロという名を広く解釈したときには、ペルーに住むアチュアルAchual、アグアルナAguaruna、ワンビサHuanbisaも含めて考える。狭く解釈したときのヒバロの人口は、1970年代にはエクアドルに1万8000人から2万人、ペルーに3000人であった。生業は無毒マニオクやトウモロコシを主作物とする焼畑耕作に狩猟採集を組み合わせたもので、南アメリカ低地の他の先住民集団と変わりがない。村落は一軒の大きな家からできており、かつては100人を超える人間が一軒の家に共同で住んでいたが、現在では30人から40人になり、いっしょに住む世帯の規模が小さくなっている。ヒバロは首狩りを行う先住民として有名であった。現在では行われていないものの、敵を襲って切り取った首はツァンツァとよばれる干し首に加工された。ツァンツァはしばしば商人に売却されたため、いまでは世界中の博物館で見ることができる。このツァンツァは戦果を誇るためのものではなく、殺された人間の復讐(ふくしゅう)の魂を封じ込めるためのものである。人間が安全に暮らし、強くなるためには、アルタム・ワカニといわれる祖先の霊を体内に取り入れなければならない。そして敵の殺害を通してアルタム・ワカニを更新しなければならないのだが、そのときに生まれ出る復讐の魂ムイサクを封じ込める役目をするのがツァンツァである。
[木村秀雄]