日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビリー・グラハム」の意味・わかりやすい解説
ビリー・グラハム
びりーぐらはむ
William Franklin Graham
(1918―2018)
ビリー・グラハムは通称。20世紀アメリカのもっとも有名なプロテスタントの牧師。ウィートン大学を卒業後、1939年にアメリカで最大のプロテスタント教派である南部バプテスト連盟の牧師となり、大衆伝道家として全米を巡回した。1949年ロサンゼルスでの伝道集会の成功で全米の注目を集めた。アメリカ国内だけでなく、これまでに180か国以上で伝道集会を行ってきた。「もっとも尊敬される人物」についてのギャラップ世論調査では、ほぼ毎回、現職大統領、ローマ法王などについで上位にランクされている。伝道集会は年6回、テレビの3大ネットワークのゴールデンタイムで放映された。1970年代以降は、一教派の牧師というよりも「大統領の牧師」「国家の牧師」として受けとめられるようになった。ニクソン以後レーガンまでの歴代大統領の就任式においては祈祷(きとう)を担当した(2001年、第43代大統領ジョージ・ウォーカー・ブッシュの就任式には、高齢と病気のため息子で牧師のフランクリン・グラハムFranklin Graham(1952― )が代理を務めた)。2001年「同時多発テロ」直後の大統領主催ワシントン大聖堂での追悼礼拝では説教を担当した。多民族国家アメリカを統合するアメリカの「見えざる国教」civil religionの代表的聖職者としての役割を担い、尊敬を集めていた。20世紀後半の歴代大統領の精神的相談者としての役割を果たし、1991年湾岸戦争の「砂漠の嵐」作戦決定の前夜には、当時の第41代大統領ブッシュに要請されてホワイトハウスに泊まり込み、大統領を精神的に支えた。
[森 孝一 2018年3月19日]
『松代幸太郎訳『世界は燃えている』(1966)、『希望のにじ』(1967)、湖浜馨訳『もう一つの革命』(1972)、松代幸太郎訳『新しい人』(1973)、『天使 その知られざる働き』(1976)、『どうしたら新生できるか』(1978)、山口昇訳『ハルマゲドン』(1981)、湖浜馨訳『今よみがえる黙示録の預言』(1993。以上すべて、ビリー・グラハム著、いのちとことば社刊)』▽『ビリー・グラハム著、相沢勉訳『幸福の秘訣』(1984・聖書図書刊行会)』▽『Billy Graham Just as I am :the autobiography of Billy Graham(1997, HarperSanFrancisco)』▽『森孝一著『宗教からよむ「アメリカ」』(1996・講談社)』