イタリア南部,シチリア島南海岸のジェーラの北方約40km,標高約700mの丘陵地帯にある町。人口約2万2000。町は11世紀に築かれた。17世紀初めに建てられたバロック様式の大聖堂がある。この町は,とくに郊外にあるローマ時代の別荘で有名。別荘はビラ・ロマーナ・ディ・カサーレVilla Romana di Casaleと呼ばれ,モンテ・マンゴーネの斜面に複雑な建築プランをもって広がっている。ほぼ同時代のスプリト(クロアチア)にあるディオクレティアヌスの宮殿の整然たるプランと対照を成し,ローマ帝政末期の建築遺構として重要であるが,約3500m2に及ぶ舗床モザイクはより大きな重要性をもつ。主題によって,装飾モティーフ,神話,狩猟の3グループに分類しうるこのモザイクは,3世紀末から4世紀に制作された。このビラを,四帝共治時代のマクシミアヌス帝,コンスタンティウス・クロルス帝などに結びつける説もあるが,現在は北アフリカの動物を都ローマに供給する大土地所有者の別荘とみなされている。モザイクの様式は,帝政末期の表現主義的要素と伝統的な写実主義が混在し,ローマ美術の資料として貴重である。
執筆者:青柳 正規
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イタリア、シチリア島中央部、エンナ県の町。丘陵地帯にある。人口2万1040(2001国勢調査速報値)。ローマ帝政期のビラvilla(館)があることで知られる。この地はイタリア本土と北アフリカを結ぶ交通の要地で、1~5世紀ごろに栄えた。ビラは街道沿いにあり、有名なのは舗床モザイクである。単純な装飾モチーフのものが多いが、狩猟や神話をテーマにした写実的なものもみられる。
[寺島孝一]
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