一枚の紙片に文字,あるいは絵を印刷して,広告や宣伝を目的として,大勢の人に配布されるもの。ビラは英語のbillがなまったものといわれ,billは中世ラテン語のbulla(中世に証書や文書などに使われていた認めの封印)に由来する。それがしだいに紙そのものを意味するようになり,広告,宣伝を目的とするものになった。ビラは商業上のみならず,政治・思想上の目的からも用いられる(日本では,商業広告の目的で使われるものを,〈ちらし〉〈引札〉というのが一般的である)。政治運動や労働運動などにおいて,ビラの作成・配布(ビラまき)は最も一般的な戦術である。それは仲間に対しては同調を求め,連帯意識を強固にし,敵対者には心理的圧迫を与える。また,戦時において飛行機などによる空からのビラまきは,心理戦術の一手段として行われた。ビラは作成および配布が容易であることから,宣伝媒体の特殊なものとされている。
執筆者:大塚 孝嗣
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…例外はシリア,ヨルダンにおいてウマイヤ朝カリフが建設したヒルバト・アル・マフジャール宮殿などの〈砂漠の宮殿〉である。16世紀に入ると,教皇,枢機卿,貴族,それに政治権力者がビラ(ウィラ)を建設するようになり,ローマの〈ビラ・ジュリア〉(現在ビラ・ジュリア美術館),〈ビラ・マダマ〉,ティボリの〈エステ家別荘〉,それにベネト地方にパラディオが建設した別荘などが現れ,イタリア・ルネサンス建築様式の普及とともに,フランス,イギリスにも広まった。【青柳 正規】。…
…しかし,15世紀ころの初期ルネサンスの庭園は,中世以来の伝統的な形式からの過渡期的な様相がつよく,まったく新しいルネサンス独自の様式が展開するのは,16世紀に入ってのことである。イタリア・ルネサンスにおいて庭園芸術がめざましい発展をとげるのは,上流階級の人々が好んで営んだビラvillaと,そこでくりひろげられる生活のゆえであった。都市の周縁部,あるいは郊外に造られたビラは,別荘というよりはひとつの知的サロンというにふさわしく,たとえばメディチ家のコジモや大ロレンツォたちがフィレンツェの郊外に建てたビラ群は,当代最高の詩や音楽,芝居などに彩られた芸文の華ひらく場であった。…
… 別荘がふつうの住宅と異なった独自の建築様式を発達させ,優れた建築作品を生みだすのは,ヨーロッパではルネサンスからバロックにかけての時代,日本では桃山時代から江戸時代前期にかけての時代である。ルネサンス時代のイタリアでは,はじめティボリなどに貴族の別荘(ビラvilla)が建てられ,そこでは多くの樹木と噴水をそなえた庭園と,庭園に面するロッジア(開廊)をそなえた主屋からなる構成が発達した。やがて建築家パラディオが故郷ビチェンツァの近くに建てた多くのビラにおいて主屋の各側面にロッジアを設けたり,あるいは主屋と翼屋をロッジアで結ぶ様式が完成された。…
※「ビラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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