日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピオンテク」の意味・わかりやすい解説
ピオンテク
ぴおんてく
Heinz Piontek
(1925―2003)
ドイツの詩人、小説家。オーバーシュレージエンのクロイツブルク(現ポーランド領クルジボルク)に生まれる。1943年兵役に就き、45年アメリカ軍捕虜収容所から復員。48年以後創作活動に従事、新聞、雑誌に寄稿する。W・レーマンやK・クローロに影響を受け、印象主義的自然抒情(じょじょう)詩に才能を発揮。詩集『浅瀬』(1952)によって認められた。のちには実存的主題を扱ったり、時代のできごとと個人的思い出を織り合わせた詩を発表。その特徴は形而(けいじ)上的な問題の解釈を目ざした簡潔な用語と隠喩(いんゆ)的な表現にあるが、同時に頌歌(しょうか)、ソネット、自由律詩など多様な形式を用いて現実を視覚的に再現することにある。また早くから散文による表現の可能性を追求し、短編集『眼(め)の前で』(1955)において客観的で寡黙なイメージの連なりによる新しい文体の創造を模索した。小説にはほかに長編『中年』(1967)、自伝的作品『わが人生の時』(1984)などがある。最初の放送劇『白い豹(ひょう)』(1961)では、ブレスラウの要塞(ようさい)を舞台にドイツ女性とソ連軍将校の愛と死を描いた。さらにドイツの短編小説を対象とした『文字――魔法の杖(つえ)』(1959)といった文芸評論や、キーツの詩の翻訳である『キーツ詩抄』(1960)がある。アンソロジーの編纂(へんさん)も手がけた。1976年にはゲオルク・ビュヒナー賞を受賞した。
[横塚祥隆]