フィレモン(読み)ふぃれもん(その他表記)Philemon

翻訳|Philemon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィレモン」の意味・わかりやすい解説

フィレモン
ふぃれもん
Philemon

ギリシア神話に出てくる貧しい農夫。彼は妻のバウキスとともにフリギアに住んでいた。あるとき人間を試すため、ゼウスヘルメスは人の姿に身をやつして旅をしていた。そしてこの地方にもやってきたが、だれもこの旅人一晩泊めてやろうとはしなかった。ただフィレモン老夫婦だけが親切に迎え入れ、貧しいながらも心を込めて2人をもてなした。この地方の人間たちの非道を怒ったゼウスは大洪水を起こしたが、フィレモン夫婦だけは助けてやり、その貧弱な住居を壮大な神殿に変えてやった。老夫婦はゼウスに、2人をその神殿の神官にしてくれるように、また死ぬときはかならず同時に死ねるようにと願い、聞き届けられた。2人は平和にその神殿を守り、やがて願いどおり同時に死んで、その神殿の前の連理の木に化したという。この物語は、オウィディウスの『変身物語』によって有名である。

[伊藤照夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィレモン」の意味・わかりやすい解説

フィレモン
Philēmōn

[生]前363頃
[没]前264頃
ギリシア新喜劇作家アテネアレクサンドリア活躍作品は 97編あったといわれ,数編がプラウツスによって翻案されている。

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百科事典マイペディア 「フィレモン」の意味・わかりやすい解説

フィレモン

ギリシア伝説でフリュギアの貧しい老農夫。ゼウスとヘルメスが乞食姿で人びとの信心を試しに同地にきたとき,彼と妻バウキスBaukisのみが温かくもてなした。神々は二人を山に登らせた後,大洪水を起こした。

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世界大百科事典(旧版)内のフィレモンの言及

【ギリシア文学】より

…ヘレニズム文明の拡散と同時に,ギリシア文学もおのずと主題と装いを改めていく。アテナイでは前5世紀の悲劇・喜劇は〈古典〉となり遠ざかるが,これらに代わってメナンドロス,フィレモンPhilēmōn,ディフィロスDiphilosらの〈新喜劇〉が新しい時代の先駆となる。ここではかつてのように一都一国の命運を担った英雄や政治家が悲劇・喜劇の中心を占めるわけではない。…

※「フィレモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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