改訂新版 世界大百科事典 「フウチョウボク」の意味・わかりやすい解説
フウチョウボク
Capparis formosana Hemsl.
フウチョウソウ科の無毛の低木。托葉はとげ状となり,葉は厚紙質で長楕円形,長さ10~15cmほど。花は数個を枝先部分の葉腋(ようえき)に生じ,開花時は白色でやがて紅色をおびる。花弁は4枚で,それよりも長いおしべ(長さ約3cm)を多数つける。めしべは1本,子房には数個の胚珠を入れる。台湾南部(恒春半島)の二次林的な場所に生育し,材が堅いので印材などに利用される。フウチョウボク属Capparisは約250種ほどが全世界の熱帯を中心に温暖な地域にまで分布している。アメリカとアフリカに多く,乾燥地域を好む。つぼみを酢漬(ピクルス)にするケーパーは食用として有名である。少数種が観賞用に栽植され,からしのような辛味成分を有し,民間薬的に利用される種もある。
フウチョウボクの所属するフウチョウソウ科Capparidaceaeは,熱帯や亜熱帯を中心にして45属700種ほどが知られている。多くは低木状の木本あるいは草本で,つる性のものもあり,少数種は高木になる。葉は単葉あるいは掌状に深裂したり,三つ以上の掌状の複葉となる。花は大部分が両性で,萼片と花弁はそれぞれ通常4枚。多くのものは子房の基部が長く延長する性質があり,特異的である。アブラナ科と同じように辛みを生ずるミロシン細胞を有しているものがあり,系統的にも近縁と考えられている。クレオメのように観賞用に栽植されるものや,食用にされる種がある。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報