改訂新版 世界大百科事典 「フェッザーン」の意味・わかりやすい解説
フェッザーン
al-Fazzān
アフリカ北部,リビア南西部を占める地域で,現在リビアの行政州の一つ。面積約55万2000km2,州都はセブハー。大半は砂漠地帯で,砂丘,ワーディー(涸れ川),塩水をたたえる潟が点在する。住民はティブ族やトアレグ族で,彼らは東部のクフラ・オアシスから南方のチャド湖やアルジェリア南部にかけての地域に生活している。
1943年リビアはイタリア統治から解放され,51年末連邦国家として独立したが,各州は軍事基地租借協定でそれぞれアメリカ,イギリス,フランスの事実上の支配下に置かれた。フェッザーンはフランス総督下に置かれ,同州の議会と州政府閣議とが総督を補佐する体制が敷かれた。55年リビア・フランス協定でフランス軍のフェッザーン撤退が決まり,63年5月フェッザーンは文字どおりリビアの一州となった。
執筆者:藤田 進 フェッザーンには,多くの先史時代の岩面画が残る。おもな遺跡はテル・イッサゲーンTel IssaghenとジグザZigza。ジグザではイタリアの考古学者グラツィオージP.Graziosiが馬の引く車の絵を見いだした。これらの馬車の絵の見られる遺跡をたどると,地中海のシルト湾からガオの近くのニジェール河畔までに及ぶ。
→サハラ砂漠
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報