日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェルナン・ゴンサレス」の意味・わかりやすい解説
フェルナン・ゴンサレス
ふぇるなんごんされす
Fernán González
(?―970)
中世イベリア半島中北部に発祥したカスティーリャの支配者で、後のカスティーリャ王国の基礎を置いた。エブロ川上流のいくつかの要衝に再入植したラーラ一族の出身で、932年ごろにレオン王国の東の国境地帯をなすカスティーリャ(「城塞(じょうさい)の国」の意)の伯(コンデ)に任命された。当時の伯は、行政・司法・財政・軍事にまたがる権限を帯びる統治者だった。フェルナン・ゴンサレスは早くからレオンの宮廷で陰謀を画策、国王と対立した。10世紀後半、レオン王権の弱体化が顕著になると、彼は国王を廃立したり、レオン領の一部を自領に加えたりした。一方、東の隣国ナバラとの国境をめぐる確執から一時はその捕虜となった。彼の死後、息子のガルシア・フェルナンデスが後を継いだとき、宗主国レオンの王権にはもはやこれを阻止する力はなく、この伯職の世襲化によってカスティーリャの独立は既成の事実となった。
[小林一宏]