日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロウナギ」の意味・わかりやすい解説
フクロウナギ
ふくろうなぎ / 袋鰻
gulper eel
umbrellamouth gulper
[学] Eurypharynx pelecanoides
硬骨魚綱ウナギ目フクロウナギ科Eurypharyngidaeの海水魚で、本科には本種しかいない。分類学上、本科はフウセンウナギ科、ヤバネウナギ科およびタンガクウナギ科とともに、ウナギ目とは別目のフウセンウナギ目に含める研究者もいる。フクロウナギ科の特徴は、レプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経て成長すること、口裂が甚だ大きいこと、鰓孔(さいこう)が吻端(ふんたん)よりも肛門(こうもん)にはるかに近いこと、背びれが頭部から始まることなどである。また、えらが6鰓裂と5鰓弓であることは、真骨類ではこの科の魚類だけである。
本種は、世界中の温帯から熱帯海域に分布する。日本近海では東北地方の太平洋沖、伊豆諸島、小笠原(おがさわら)諸島、土佐湾、東シナ海からとれている。体は伸長し、尾部は後方に向かってだんだんと細くなり、後端でへら状になる。肛門は体の前3分の1付近にある。頭は大きくて、頭高は高いが、頭骨は小さく、大きな口の上に乗っている。目は小さく吻端近くに位置する。口は著しく大きく、口裂は肛門前長の半分以上占め、袋状に拡張することができる。歯は小さくて先端で曲がり、密生して数列に並ぶ。背びれは肛門前長の中間付近から、臀(しり)びれは肛門の直後から始まり、尾端まで伸びる。尾びれはない。胸びれは退化的である。鱗(うろこ)はない。側線には開口部がなくて、かわりに小管状物が出ている。体は一様に黒くて、斑紋(はんもん)などはない。最大全長は約80センチメートル。水深500~3000メートルにすみ、主食は甲殻類であるが、魚類、頭足類、その他の無脊椎(むせきつい)動物なども食べる。大きな口をしているが、拡張性の胃をもたないこと、口はじょうぶではないこと、歯は弱いことなどから大きな餌(えさ)を食べることができないと考えられる。体を垂直に立てて、大きな口を広げて、エビ類などの餌を誘い込み、口を閉じて水だけを鰓孔から排出し、餌を飲み込んでいるとみられる。尾端部にあるへら状物は発光器であると考えられている。雄は成熟すると、嗅覚(きゅうかく)器官が大きくなり、口は弱々しくなり、歯は退化してなくなる。雌は比較的変化しない。
[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]