フシグロ(その他表記)Melandryum firmum(Sieb.et Zucc.)Rohrb.

改訂新版 世界大百科事典 「フシグロ」の意味・わかりやすい解説

フシグロ (節黒)
Melandryum firmum(Sieb.et Zucc.)Rohrb.

原野や林縁に普通にみられる無毛のナデシコ科多年草和名は節の部分が暗紫色を帯びることからついた。茎は基部から直立し,高さ30~80cmに達する。葉は対生し,長さ5~10cmで長楕円形,先はとがる。5~10月,茎の先や上部葉腋ようえき)に集散花序をつける。葉腋から出る花序の枝は,暖かい地方のものでは長く伸びるが,本州以北のものではわずかしか伸びないので,花が節にかたまってつくように見える。萼は鐘形で先は5裂し,その先から,浅く2裂した5枚の白い花弁が直径5mmほどで広がる。花柱は3本,おしべは10本。果実は先が6裂する。日本全国,中国,東シベリアに分布する。中国では全草を解熱利尿の薬とする。同じ地域に分布し,茎や葉,萼に毛のあるものをケフシグロf.pubescens (Makino) Ohwiという。なおフシグロセンノウは別属のセンノウ属の植物。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フシグロ」の意味・わかりやすい解説

フシグロ(節黒)
フシグロ
Melandryum firmum

ナデシコ科の越年草で,アジア東部の温帯に広く分布する。茎は無毛平滑で高さ 30~60cmとなり,長さ3~10cmの長楕円形でほとんど柄のない葉を対生する。この葉のつく部分,つまり節が紫褐色を帯びるのでこの和名がある。夏に,枝分れする花序を茎の上部と葉腋につけ,長さ 1cm足らずの鐘形の萼筒をもった花をつける。この萼筒は緑色で縦に 10本ほどの紫褐色の脈が目立つ。花弁は萼筒の内側から5枚出て,白色であるがごく小さい。この属の植物としてはほかに南アルプスの北岳などに高山性のタカネマンテマ M. apetalumがあり,北半球の周極地方にも広く分布している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フシグロ」の意味・わかりやすい解説

フシグロ
ふしぐろ / 節黒
[学] Silene firma Sieb. et Zucc.

ナデシコ科(APG分類:ナデシコ科)の越年草。茎は直立し、高さ30~80センチメートル、毛はない。葉は広披針(こうひしん)形。夏、茎の上部に小花をやや密につける。花弁は白色、先は2裂する。日当りのよい草地に生え、日本全土、および朝鮮半島、中国、東シベリアに分布する。名は、節が暗紫色を帯びることによる。マンテマ属Silene植物であるが、子房の基部に隔壁がないことから、フシグロ属Melandryumとされることがある。

三木栄二 2021年1月21日]

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