2000年に登録されたオマーンの世界遺産(文化遺産)。「フランキンセンスの地」、あるいは「乳香の道」ともいう。フランキンセンスは、アラビア半島南部に自生する樹木。この樹木から、オマーン特産のたいへん高価な香料(乳香)がつくられる。乳香は古代からたいへん貴重で聖なるものとされ、クレオパトラやシバの女王も親しんだ。エジプトでは太陽神(ラー)への祈祷には欠かせないものとされていた。また、イエス・キリストが誕生した際、その祝福に訪れた東方の3使者がミルラ(没薬(もつやく))と金とともに、このフランキンセンスを示し、どれを選ぶかキリストに示したところ、「偉大な商人」の象徴である金、「偉大な医者」の象徴のミルラではなく、「偉大な預言者」の象徴であるフランキンセンスを選んだといわれている。フランキンセンスの地は、ドファール地方の隊商都市のシズル、サラーラ、ホール・ルーリ、ワジ・ダウカー一帯にあり、古代から中世にかけて乳香交易で栄えたところである。その歴史は紀元前2世紀にさかのぼる。同地方にはかつての栄華をしのばせるシズルのウバール遺跡、サラーラのアル・バリード遺跡、ホール・ルーリのサムフラム遺跡などが点在している。また、フランキンセンスも、ワジ・ダウカー乳香公園で見ることができる。◇英名はLand of Frankincense