翻訳|wadi
アラビア語で河谷の意味であるが、普段は表流水をみない水無川(みずなしがわ)である。乾燥地域では、降雨時にのみ一時的に水流が発生し、ときには奔流となって流下し、河谷を形成する。普段は降水量が少なく、蒸発量がその20倍にも達する熱帯砂漠などでは、表流水は蒸発するか、地下に浸透して水無川となる。ワジの河床は砂礫(されき)に覆われて比較的平坦(へいたん)であるとともに、地下水がほかの所より浅く、所々に湧(わ)き出てオアシスとなる。このため集落が立地したり、隊商の交通路として利用される。ワジは一時的に水流を生じてもすぐに涸(か)れて広い河床だけが残る。北アフリカ、アラビアではワジ、南アフリカではダンガdanga、インドではヌラnullah、アメリカではアロヨarroyoとよぶ。
[髙山茂美]
アラビア語で川,河谷,河床を意味する語。正しくはワーディーwādīと呼ぶ。アラビアや北アフリカなどの乾燥地域の川は,雨季の激しい降雨の際に一時的に水が流れるだけで,ふだんは河床に水をもたない。ワジが意味するのはそのような水無し川,涸(か)れ川,涸れ谷である。本流,支流に対応し大小さまざまな規模のものが存在する。巨大なワジは深く刻まれている場合が多いが,これは気候が湿潤で河川の水量も豊富であった更新世(洪積世)の浸食跡とみなされる。巨大なものに,シリア砂漠のワーディー・ウバイヤド,サハラ砂漠のワーディー・イルハルハルなどがある。周囲の土地よりも地下水面が浅いため,泉がわき出ていることがあり,隊商路として用いられることも多い。
執筆者:末尾 至行
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…間欠河川ともいう。乾燥地域や半乾燥地域に多くみられ,アラビアやアフリカ北部ではワジと呼ばれる。降雨時の非常に短い間だけ流水がみられる場合と,雨季には恒常的に流水があるが,乾季に流水がみられなくなる場合とで,区別することもある。…
※「ワジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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