日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラッグ鉱」の意味・わかりやすい解説
ブラッグ鉱
ぶらっぐこう
braggite
白金(Pt)を最多量の白金族元素として含む単純硫化鉱物。1932年X線的方法のみによって発見された最初の新鉱物である。化学式(Pt,Pd,Ni)Sのなかのパラジウム(Pd)やニッケル(Ni)は必須(ひっす)成分。純粋なクーペライト(PtS)は同じ正方晶系であるが、クーパー鉱cooperiteという別鉱物となる。理想式としてPt5Pd2NiS8が採用されることもある。自形はおそらく正方短柱状。日本では産出未報告。層状塩基性貫入岩体中、斜方輝石斑糲(はんれい)岩noriteに伴われる正マグマ性鉱床に多くみられる。
共存鉱物は硫化物の多い例をあげると、黄銅鉱、キューバ鉱、ペントランド鉱、マッキノー鉱mackinawite(化学式FeS1-X)、自然金、クーパー鉱、ラウラ鉱laurite(RuS2)、方自然鉄白金isoferroplatinum((Pt,Pd)3(Fe,Cu))などである。肉眼的な特性について言及した報告はない。命名は、X線による結晶質物質研究の先駆者であるイギリスの物理学者ウィリアム・ヘンリー・ブラッグWilliam Henry Bragg(1862―1942)と、その息子のウィリアム・ローレンス・ブラッグWilliam Lawrence Bragg(1890―1971)にちなむ。
[加藤 昭]