ブルロアラー(読み)ぶるろあらー(その他表記)bull-roarer

翻訳|bull-roarer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルロアラー」の意味・わかりやすい解説

ブルロアラー
ぶるろあらー
bull-roarer

薄板状の木片(あるいは石や骨)の端に紐(ひも)を結び、紐の一端を持って空中で旋回させることでうなるような音を発する気鳴楽器一種別名「うなり板」。形は槍先(やりさき)形や楕円(だえん)形が多く、長さは15~75センチメートルとさまざまで、普通、片面にだけ彫刻が施される。紐の先につけられた木片は、回す人を軸として旋回しながらそれ自身も回転し、木片周囲の空気を振動させて、うなり音を生む。大型のものほど低く大きい音が出るが、音高と音量は紐の長さや回転速度などによって変化する。分布地域はオセアニア、南北アメリカ、アフリカ、ヨーロッパなど広範囲に及ぶ。今日多いのは玩具(がんぐ)としての用例だが、独特の音響が霊的存在の声と結び付けられて、成人儀礼や農耕儀礼などで威嚇的・呪術(じゅじゅつ)的に用いられている例も少なくない。

[山田陽一]


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改訂新版 世界大百科事典 「ブルロアラー」の意味・わかりやすい解説

ブル・ロアラー
bull-roarer

うなり木。薄い長円形の板を紐の先に結びつけ,紐の末端を持って勢いよく振りまわす楽器。板が風を切って牛が吼えるような音を出す。板が小さく紐が短いものほど音が高い。未開社会では,魔法の楽器として神霊,悪魔,祖先の声を響かせるために用いる。この楽器は,いわゆるタブーの楽器であり,女性が見ることを厳しく禁じている。楽器分類法では振り回す気鳴楽器に属する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のブルロアラーの言及

【アメリカ・インディアン】より

…古代高文化では,寺院や特設舞台で司祭的存在の音楽家が宗教儀礼を演じたらしい。孤立した部族社会のインディオたちは,自然環境を活用して,たとえば乾燥した大きなさや豆をガラガラとして振奏して踊ったり,管状の骨をトランペット式に吹奏したり,木片に紐をつけて〈うなり木(ブル・ロアラー)〉として空中高く振りまわすなどユニークである。笛の類では,1本だけの管を吹くもの,3~10本ほどの管を束ねたパンパイプなどが混交音楽文化の要素としてはたらいている。…

【オーストラリア】より

…堅い木に白蟻が孔をあけた木製の長いトランペット(またはドローン・パイプ)であるディジェリドゥーdidjeriduは,北部にのみ演奏され,専門的な訓練を要求される複雑な演奏技法により,明確なリズムをもった低音の連続音が出される。さらに,成人式を受けた男性のみの秘密の儀式で,ブル・ロアラー(うなり木)なども用いられるが,これらの楽器は超自然的な存在,またその声を表すといわれている。 次に移住民の音楽,現代音楽に目を転ずると,白人の本格的な音楽活動が組織されるようになったのは1840年代以後,自由な移民とともに音楽家が移住するようになってからである。…

※「ブルロアラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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