日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブレイテンバッハ」の意味・わかりやすい解説
ブレイテンバッハ
ぶれいてんばっは
Breyten Breytenbach
(1939― )
南アフリカ共和国の白人詩人、小説家、画家。アフリカーナー(オランダ系白人)出身の反アパルトヘイト運動家として有名。ケープ・タウン大学で1年半文芸学を修めたのち、中退して、ヨーロッパを転々と雑役に従事しながら移動。1961年に南ベトナム政府財務長官の娘と結婚。パリに居を構え、画家として頭角を現した。64年、処女詩集『汗水を垂らす強い牛』を発表、以来9冊の詩集を出し、アフリカーンス語で人種差別告発の詩を書く数少ないアフリカーナー出身の詩人として注目されている。1970年代初期に何度か南アフリカに入国し、アパルトヘイト反対の姿勢を強め1975年にはアフリカ民族会議(ANC)内部に白人組織「火花」を結成する目的で南アに密入国、テロリズム法の適用を受け逮捕されて懲役9年の判決を受け、82年末に釈放された。終末的な恐怖と陰鬱(いんうつ)さの漂う獄中詩集『アフリカでは、ハエの方がずっと仕合せ』(1978)は、彼の最高傑作として評価が高い。ほかに、獄中記『テロリスト・アルビーノの真の告白』(1984)、アパルトヘイト廃棄後の1991年に南アを再訪して書いた幻滅の記録『楽園への回帰』(1993)、長い人生の旅路の追想記『ドッグ・ヒラット』(1998)、アフリカーンス語からの英訳書『沈みゆく船のブルース』(1977)、『回想記』(1984)、短編集『一頭の馬がすべて』(1990)、『目に映じた絵画』(1993)がある。
[土屋 哲]