《グリム童話》20番の話。老いたロバが主人に冷遇されるので逃げ出し,ブレーメンへ行って町の音楽隊にやとってもらおうと思う。途中で同じような境遇の猟犬,猫,雄鶏を誘って行く。夜になり,森の中で野宿しようとするが,雄鶏が遠くに明りを見つけたので,そこへ行くと,強盗のすみかで,強盗たちがごちそうを食べている。ロバ,犬,猫,雄鶏の順で背中に乗って大声で叫ぶと強盗たちは逃げ出す。動物たちはごちそうを食べて寝る。夜中に強盗の一人が偵察に戻ると,猫に襲われ,犬にかまれ,ロバに蹴られ,雄鶏に叫ばれる。強盗は怪物がいるものと思って逃走し,動物たちは安住する。後半部は日本の猿蟹合戦を思わせるが,同趣の話の最古の記録は,イソップの寓話である。またインドの《パンチャタントラ》,ペルシアの《トゥーティー・ナーメ》にもみられる。
執筆者:小澤 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報