改訂新版 世界大百科事典 「プロテウス菌」の意味・わかりやすい解説
プロテウス菌 (プロテウスきん)
Proteus
腸内細菌科に属する細菌の一属で,ブルガリスP.vulgaris,ミラビリスP.mirabilis,モルガニイP.morganii,レットゲリP.rettgeriの4種がある。プロテウス属は長さ1.5~4μm,幅0.5~0.8μmの杆菌であるが,多形性が強く糸状になることがある。グラム陰性で周毛性鞭毛をもち,活発に運動を行う。普通培地によく発育する。活発な運動性のために,平板培養では培地全面に膜状に急速に広がる。ヒトや動物の腸内に存在するほか,汚水,土壌などに広く分布する。自然界では腐敗の原因菌の一つである。プロテウス菌は,腸内の非病原菌であるが,ときに尿路感染,化膿その他の病原になることがある。プロテウス菌は,多くの抗生物質に対して抵抗性をもつ。ブルガリス中のX菌群と呼ばれるものは,発疹チフスや恙虫(つつがむし)病のリケッチアと共通抗原を有し,これらの疾患の診断に用いられる(これをワイル=フェリックス反応という)。
執筆者:川口 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報