家庭医学館 「つつがむし病」の解説
つつがむしびょう【つつがむし病 Scrub Typhus】
つつがむし病リケッチアという微生物の感染でおこります。このリケッチアはノネズミが保有しています。
人間がこのリケッチアに感染するのは、ノネズミに寄生しているツツガムシ(毛ダニ、赤ダニ)の幼虫に刺されるためです。
●発生地域と季節
新潟、山形、秋田の河川流域に夏季に発生する風土病として昔から有名でしたが(古典的つつがむし病)、1950年以降、北海道と沖縄を除く本州、四国、九州の各地で、秋から初冬にかけて発生するつつがむし病が存在することが判明しました(新型つつがむし病)。
韓国、中国、東南アジアにも広く存在します。
日本では、近年、農薬の使用中止によってノネズミが増え、つつがむし病も増加の傾向をみせています。
[症状]
ツツガムシに刺されたところ(刺し口といい、ふつう、わきの下か腰のまわりに1~2か所)が小さく赤く腫(は)れて化膿(かのう)し、近くのリンパ節(せつ)も腫れて痛みます。
刺されて6~10日たつと、寒けがして発熱し、2~3日で40℃の高熱になります(コラム「つつがむし病」)。
頭痛、筋肉痛、目の充血(じゅうけつ)などがみられ、まもなく、全身の皮膚に直径2~5mmほどの赤い発疹(ほっしん)がまばらに現われ、3~4日で頂点に達した後、しだいに消えます。
刺し口と関連リンパ節の腫れなどの特徴的な症状、血液検査で診断がつきます。
[治療]
抗生物質のテトラサイクリンとクロラムフェニコールが特効薬で、これの使用で熱その他の症状は2~3日で消えますが、医師の指示どおりに服用を続けないと再発しやすいものです。手おくれでなければ、生命の危険はほとんどありません。
[予防]
予防ワクチンはないので、ふだんの予防がたいせつです。
つつがむし病リケッチアのいる地域に入るときには、フタル酸ジメチルや安息香酸(あんそくこうさん)ジブチルのような忌避剤(きひざい)を衣服に噴霧(ふんむ)し、露出した皮膚には、これらの薬剤を含む軟膏(なんこう)を塗ります。土地の消毒は、大量の殺虫剤が必要で不経済ですし、ツツガムシの卵には効果がありません。
つつがむしびょう【つつがむし病】
潜伏期間は7~14日、ときには20日。38~40℃の高熱、倦怠感(けんたいかん)、悪寒戦慄(おかんせんりつ)(寒けと震え)、頭痛、咽頭痛(いんとうつう)、粘膜充血(ねんまくじゅうけつ)などの全身症状があり、重篤感(じゅうとくかん)があります。発熱と前後して、体幹(たいかん)(胴体(どうたい))に左右対称のかゆみのないバラ疹(しん)ができはじめます。刺し口は黒い痂皮(かひ)(かさぶた)のついた大豆(だいず)大の噴火口状で、周囲に発赤(ほっせき)(あかみ)があります。刺し口近くのリンパ節も痛んで腫(は)れます。
つつがむし病が疑われたら、刺し口がないか、わきの下、鼠径部(そけいぶ)(もものつけ根)、陰部などをくまなく調べます。初期では肝機能検査でGOTの値が上昇します。診断が遅れると、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)(DIC(「播種性血管内凝固症候群(DIC)」))になり、生命に危険があることもあります。
抗生物質の塩酸ミノサイクリン剤(ミノマイシン)やテトラサイクリン剤の内服がとてもよく効きます。