プロテウス(読み)ぷろてうす(英語表記)Proteus

翻訳|Proteus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロテウス」の意味・わかりやすい解説

プロテウス
ぷろてうす
Proteus

ギリシア神話の海の老神。ネレウスと同じ「海の老人」とよばれ、預言の力と自由に姿を変える力とを備えていた。海の家畜アザラシの番をする牧人として、ポセイドン配下にあった。ホメロスの『オデュッセイア』によれば、メネラオストロヤからの帰路、暴風にあってエジプトのファロス島に漂着し、その島へ現れるプロテウスから未来を聞き出すために、彼をつかまえようとした。プロテウスがライオン、大蛇、豹(ひょう)、猪(いのしし)、水、大木と次々に変身して逃れるのをメネラオスが離さなかったため、プロテウスはあきらめて本来の姿に戻り、帰国の道を教え、遠征した諸将の帰国のありさまを語って聞かせた。おそらく彼は、航海者の空想から生み出された親しみやすい海神と考えられる。後のヘロドトスエウリピデスによれば、彼はエジプト王となり、スパルタからパリスとともに出奔して漂着したヘレネを保護したとされる。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロテウス」の意味・わかりやすい解説

プロテウス
Proteus

海の老人とあだ名されるギリシア神話の海神。ポセイドンの家畜であるアザラシなどの海獣番人をつとめる。ナイル川河口に近いファロス島の海岸に現れ,予言能力をもつが,またあらゆる物に姿を変えることができるので,彼の教えを受けようとする者は,正午に昼寝をしているところを捕え,何に変身しても放さずにいなければならない。ネレウスの娘の1人プサマテと結婚し,娘エイドテアと,エジプト王となったテオクリュメノスとの2子をもうけたとされる。

プロテウス
Proteus

真正細菌類腸内細菌科の1属。数種が知られているが,いずれも直状の桿菌でその大きさは径 0.5~1.0μm,長さ 1.0~3.0μm。多数の周毛を有して活発に運動する。その運動性は 25℃のときに最も旺盛で,36℃になると衰えるか停止する。グラム陰性。きわめて普通に存在し,いろいろの有機物,特に食肉などに発生して腐敗を起す。糞便などにも見出される。ときとして下痢の病原となる。

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